特定技能「介護」分野では、受入れ見込数と在留者数の差が徐々に縮まりつつあります。出入国在留管理庁が2026年7月3日に掲載した速報値では、2026年3月末時点の介護分野の特定技能1号在留者数は74,745人となりました。
一方、最新の介護分野別運用方針では、2024年度から2028年度までの5年間における1号特定技能外国人の受入れ見込数は126,900人とされています。この数値は単なる需要予測ではなく、制度上は上限数として運用される点が重要です。
本稿では、最新の公表データをもとに、介護分野の在留者数、上限数、増加ペースを整理し、現在の進捗が続いた場合にいつ上限へ近づくのかを実務目線で解説します。
最新の前提:介護分野の上限は126,900人と見る
本稿の基準日は2026年7月21日です。特定技能「介護」分野の上限を読むうえでは、出入国在留管理庁が2026年7月3日に掲載した「特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年3月末時点・速報値)」と、2026年1月23日閣議決定の介護分野別運用方針を、最新の前提として扱います。
注意したいのは、過去資料や一部の公的サイトに、2024年3月29日閣議決定ベースの「介護 135,000人」という数字が残っている点です。制度情報を追う際には、この数字をそのまま現在の上限として読むのではなく、最新の介護分野別運用方針に基づき、1号特定技能外国人の受入れ見込数は「126,900人」と整理するのが適切です。
| 確認項目 | 最新の整理 |
|---|---|
| 基準にする公表情報 | 2026年7月3日掲載の速報値、2026年1月23日閣議決定の介護分野別運用方針 |
| 対象期間 | 2024年度から2028年度までの5年間 |
| 介護分野全体の受入れ見込数 | 160,700人 |
| 内訳 | 1号特定技能外国人126,900人、育成就労外国人33,800人 |
| 1号特定技能の上限として見る数 | 126,900人 |
ここでいう「受入れ見込数」は、単なる人手不足の予測値ではありません。特定技能制度の基本方針では、分野ごとに原則5年ごとの受入れ見込数を示し、それを外国人受入れの上限数として運用するとされています。つまり、介護分野で「あと何人受け入れられるのか」を見る場合、この126,900人が実務上の基準線になります。
介護分野全体では、2028年度に必要となる介護就業者数が235万7,300人と推計され、生産性向上や国内人材確保を進めてもなお16万700人程度の不足が見込まれる、という考え方が示されています。この不足見込みが、介護分野全体の受入れ見込数160,700人の根拠です。ただし、そのすべてが特定技能1号ではなく、育成就労を含む構成になっている点は押さえておく必要があります。
したがって、本稿では以降、介護分野の特定技能1号マーケットを評価する際の母数を「126,900人」と置きます。135,000人という古い表示を見かけた場合でも、採用計画や充足率の計算では、最新の公表情報に基づいて読み替えることが重要です。
介護分野で外国人材受入れが必要とされる背景
介護分野に大きな外国人材の受入れ枠が設定されている背景には、単なる一時的な採用難ではなく、今後の高齢化を前提にした構造的な人手不足があります。厚生労働省は「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024年7月12日公表)を踏まえ、2028年度に必要となる介護就業者数を235万7,300人と推計しています。
この必要数に対し、国は国内人材の確保や職場環境の改善、介護ロボット・ICTの活用などによる生産性向上を進める方針です。ただし、それらを織り込んでもなお、2028年度時点で16万700人程度の人手不足が見込まれると整理されています。この不足分を補う政策手段の一つとして、介護分野全体の受入れ見込数160,700人が設定されています。
| 項目 | 人数 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 2028年度に必要な介護就業者数 | 235万7,300人 | 厚生労働省の推計 |
| 見込まれる人手不足 | 16万700人程度 | 国内確保・生産性向上後も残る不足 |
| 介護分野全体の受入れ見込数 | 160,700人 | 不足分に対応する受入れ枠 |
| 1号特定技能外国人 | 126,900人 | 2024年度〜2028年度の上限として運用 |
| 育成就労外国人 | 33,800人 | 人材育成を含む受入れ枠 |
ここで重要なのは、160,700人のすべてが特定技能1号ではない点です。最新の介護分野別運用方針では、介護分野全体の受入れ見込数160,700人の内訳として、1号特定技能外国人126,900人、育成就労外国人33,800人が位置づけられています。特定技能1号の126,900人は、2029年3月末までの5年間の受入れ上限として運用される数値です。
つまり、介護分野の外国人材受入れは「特定技能だけで不足を埋める」設計ではありません。国内人材の採用・定着、業務改善による生産性向上、育成就労から特定技能への移行、さらに介護福祉士資格取得後の在留資格「介護」への移行などを組み合わせ、介護サービスを支える人材基盤を厚くしていく政策の一部と見る必要があります。
介護事業者にとっても、この考え方は実務上重要です。外国人材の採用は有効な選択肢ですが、受入れ後の教育、日本語での記録・申し送り、資格取得支援、現場職員との役割分担まで含めて設計しなければ、定着にはつながりません。大きな受入れ枠は、介護現場の深刻な不足を映す数字であると同時に、受入れ側の体制整備が問われていることを示しています。
2026年3月末時点の在留者数は74,745人、充足率は58.9%
出入国在留管理庁が2026年7月3日に掲載した速報値によると、2026年3月末時点の特定技能1号「介護」分野の在留者数は74,745人です。最新の介護分野別運用方針で示された1号特定技能外国人の受入れ見込数、つまり上限として運用される126,900人に対し、充足率は58.9%まで進んでいます。
| 区分 | 在留者数 | 受入れ見込数 | 充足率 | 残り枠 |
|---|---|---|---|---|
| 介護分野 | 74,745人 | 126,900人 | 58.9% | 52,155人 |
| 特定技能1号全体 | 404,527人 | 805,700人 | 50.2% | 401,173人 |
全分野合計と比べると、介護分野の進捗はやや先行しています。特定技能1号全体では、在留者数404,527人に対して受入れ見込数805,700人、充足率は50.2%です。これに対して介護は58.9%で、全体平均を8.7ポイント上回っています。人手不足が構造的に続く分野であることに加え、技能実習からの移行や海外からの新規採用が積み上がっていることが背景にあります。
一方で、残り枠は52,155人あります。数字だけを見るとまだ余裕があるようにも見えますが、介護分野は直近の増加幅が大きく、上限管理の観点では「半分を超えた」ではなく「6割近くまで進んだ」と捉えるほうが実務的です。今後の採用計画では、入国・転職・在留資格変更の手続きに時間がかかることも踏まえ、単年度ではなく2027年度以降まで見通しておく必要があります。
国籍別の構成を見ると、介護分野の供給国・地域にも特徴があります。厚生労働省資料によれば、2025年6月末時点の介護分野の特定技能1号在留者54,916人のうち、上位はインドネシア16,249人、ミャンマー15,046人、ベトナム9,713人、フィリピン5,122人、ネパール4,713人です。
- 🇮🇩インドネシア:16,249人
- 🇲🇲ミャンマー:15,046人
- 🇻🇳ベトナム:9,713人
- 🇵🇭フィリピン:5,122人
- 🇳🇵ネパール:4,713人
介護分野では、これらの国・地域が主要な人材供給元になっています。採用実務では、日本語学習環境、介護分野への就労意欲、送出し側の教育体制、既存職員とのコミュニケーション支援なども、人数確保と同じくらい重要です。在留者数の伸びを読む際は、単に枠の残数を見るだけでなく、どの国・地域から、どのルートで人材が入ってきているのかも合わせて確認することが大切です。
直近の増加ペースから見る上限到達の目安
では、介護分野の特定技能1号は、このまま増えるといつ上限に近づくのでしょうか。ここでは、出入国在留管理庁が公表した在留者数をもとに、あくまで機械的な推計として整理します。前提となる上限は、最新の介護分野別運用方針で示された1号特定技能外国人の受入れ見込数126,900人です。
2026年3月末時点の介護分野の在留者数は74,745人です。上限126,900人との差は52,155人で、これが現時点の残り枠にあたります。直近では、2025年12月末の67,871人から2026年3月末の74,745人へ、3か月で6,874人増えています。単純平均にすると、月約2,291人の純増ペースです。
| 見方 | 増加ペース | 残り52,155人の消化期間 | 到達目安 |
|---|---|---|---|
| 直近3か月ベース | 月約2,291人 | 約22.8か月 | 2028年2月ごろ |
| 直近1年ベース | 年26,332人 月約2,194人 | 約1.98年 | 2028年3月ごろ |
もう少しならして見るために、2025年3月末から2026年3月末までの年間増加数を使うと、増加数は26,332人です。2026年3月末時点の残り枠52,155人をこの年間増加数で割ると約1.98年となり、126,900人に達する時期は2028年3月ごろという計算になります。
一方、直近3か月の月約2,291人というやや速いペースで見れば、残り枠の消化には約22.8か月かかります。2026年3月末から数えると、到達目安は2028年2月ごろです。つまり、現在の純増ペースが続くという単純な前提では、制度上の対象期間である2029年3月末より約1年前、2028年2〜3月ごろに上限へ近づく可能性があります。
ただし、これは「申請数」そのものではなく、在留者数の純増を使った推計です。少なくとも確認できる最新の公表資料では、介護分野に限定した申請件数や審査中件数は一覧化されていません。そのため、帰国、在留資格「介護」への変更、介護福祉士資格取得、審査処理の状況、送出国側の事情などによって、実際の到達時期は前後します。
介護分野の上限到達は、今すぐ枠が尽きるという段階ではありません。しかし、2026年3月末時点で充足率は58.9%まで進んでおり、年2.6万人規模で増えていることを踏まえると、2027年度以降も十分な余裕があるとは言い切れません。採用を検討する事業者は、海外採用、国内転職者採用、技能実習・育成就労からの移行、介護福祉士資格取得支援を早めに組み合わせて考える必要があります。
「申請数進捗」を読むうえでの注意点
介護分野の上限到達を考えるとき、「申請数がどこまで進んでいるのか」を見たいところですが、ここは慎重に読む必要があります。出入国在留管理庁は、特定技能制度全体について、在留資格認定証明書交付件数や在留資格変更許可件数などの月次推移を公表しています。これらは制度全体の動きを知るうえで重要な資料です。
一方で、少なくとも本稿で確認できる最新の公表資料では、特定技能「介護」分野だけに限定した申請件数や、審査中件数が一覧化されているわけではありません。つまり、「介護分野でいま何件の申請が出ていて、何件が審査中か」を公表資料だけで正確に積み上げることは難しい、という前提があります。
| 確認できる情報 | 読み取り上の限界 |
|---|---|
| 特定技能制度全体の交付件数・変更許可件数などの月次推移 | 介護分野だけの申請進捗とは切り分けられない |
| 介護分野の在留者数 | すでに在留している人数であり、申請中案件は含まない |
| 介護分野の受入れ見込数 | 上限として運用されるが、到達時期そのものを示すものではない |
そのため本稿では、介護分野の在留者数の増加を、受入れ進捗を測る最も信頼できる代理指標として扱います。2026年3月末時点の特定技能1号「介護」の在留者数は74,745人で、受入れ見込数126,900人に対する充足率は58.9%です。この数字は、申請ベースではなく、実際に在留している人数ベースの進捗です。
したがって、上限到達の見込みも「申請中の案件まで含めた厳密な予測」ではありません。直近の純増ペースをそのまま延長した場合に、残り枠52,155人がいつ頃埋まるかを計算した、機械的な推計です。本文で示した2028年2〜3月ごろという目安も、この前提に立ったものです。
実際の在留者数は、申請の許可だけで増えるわけではありません。帰国や転職による離脱、在留資格「介護」への変更、介護福祉士資格の取得、更新不許可などによって減少・移動も起こります。さらに、制度運用の変更、審査処理能力、送出国側の手続きや人材供給の状況によって、増加ペースは前後します。
介護事業者が採用計画を立てる際は、「まだ上限まで残りがある」とだけ見るのではなく、公表済みの在留者数、直近の純増ペース、制度変更の影響をあわせて確認することが重要です。特に2027年度以降に採用を予定している場合は、最新の公表情報を確認しながら、海外採用、国内転職者の採用、技能実習・育成就労からの移行など、複数の採用ルートを早めに検討しておく必要があります。
介護分野の制度上の特徴と、訪問系サービス解禁の影響
介護分野のマーケットを見るうえでは、在留者数や上限だけでなく、「どの業務に、どの形で受け入れられるのか」を押さえる必要があります。特定技能1号「介護」で従事できるのは、利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助などの身体介護等と、それに付随する関連業務です。
| 項目 | 介護分野の主なルール |
|---|---|
| 従事できる業務 | 身体介護等と、それに付随する関連業務 |
| 雇用形態 | 直接雇用に限られる |
| 受入れ人数 | 事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数が上限 |
| 特定技能2号 | 介護分野は対象外 |
特に人数枠は、法人全体ではなく事業所単位で確認する点が実務上の注意点です。採用計画を立てる際は、施設ごとの常勤介護職員数、既に受け入れている特定技能外国人の人数、今後の退職・異動見込みを合わせて見ておく必要があります。
また、介護分野は特定技能2号の対象ではありません。これは、介護分野にはすでに専門的・技術的分野の在留資格「介護」が用意されているためです。そのため、特定技能1号として働く外国人が長期的に日本で介護職を続けるには、介護福祉士資格を取得し、在留資格「介護」へ移行するキャリア設計が重要になります。
もう一つの大きな変更点が、2025年4月21日付けの告示等改正による訪問系サービスへの従事解禁です。一定要件を満たす特定技能外国人について、訪問介護など在宅介護領域での就労が可能になりました。施設系サービスに偏っていた受入れニーズが、在宅介護にも広がる可能性があります。
ただし、これは「訪問介護で自由に受け入れ可能になった」という意味ではありません。原則として、介護職員初任者研修修了課程等を修了していること、介護事業所等での実務経験が1年以上あることなどが前提です。さらに、受入事業所側にも遵守事項が設けられています。
具体的には、受入機関が介護分野における特定技能協議会事務局へ必要書類を提出し、適合確認書の発行を受ける必要があります。加えて、外国人本人のキャリアアップ計画を作成し、定期報告を行うことも求められます。訪問系サービスの解禁は、介護分野の受入れ余地を広げる材料である一方、制度対応や教育体制を整えた事業者から活用が進むと見るべきです。
まとめ
特定技能「介護」分野を見るうえで、まず押さえるべき結論は、最新の受入れ見込数、つまり制度上の上限は126,900人と整理するのが妥当だという点です。出入国在留管理庁が2026年7月3日に掲載した令和8年3月末時点の速報値では、介護分野の在留者数は74,745人でした。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 最新の受入れ見込数(上限) | 126,900人 |
| 2026年3月末時点の在留者数 | 74,745人 |
| 充足率 | 58.9% |
| 残り枠 | 52,155人 |
直近の純増ペースをそのまま当てはめると、残り52,155人はおおむね2年弱で消化される計算です。2025年3月末から2026年3月末までの年間増加数は26,332人、直近3か月でも月約2,291人の増加となっており、現在の勢いが続けば2028年2〜3月ごろに上限へ到達する可能性があります。
ただし、この見通しは「申請中の人数」そのものを積み上げたものではありません。少なくとも確認できる最新の公表資料では、介護分野に限定した申請件数や審査中件数は一覧化されていないため、本稿では公表済みの在留者数の増加を、受入れ進捗を測る代理指標として扱っています。実際の到達時期は、帰国、在留資格「介護」への変更、介護福祉士資格取得、審査処理、制度運用の変更などにより前後します。
外食業のように上限到達が目前とまでは言い切れませんが、介護分野も2026年3月末時点で既に6割近くまで進捗しています。2027年度以降も「枠は十分に残っている」と断定できる状況ではなく、訪問系サービスへの従事解禁によって受入れ需要がさらに広がる可能性もあります。
介護事業者にとって重要なのは、単発の採用ではなく、複数ルートを早めに組み合わせることです。海外採用、国内にいる特定技能人材の転職採用、技能実習・育成就労からの移行、さらに長期就労を見据えた介護福祉士資格取得支援を並行して設計することが、今後の採用余地を確保する実務上のポイントになります。