特定技能人材の採用・定着を考えるうえで、介護福祉士国家試験の受験と合格は大きな節目です。単に資格を取る話ではなく、本人が日本で介護職として長く働き続けるためのキャリア設計であり、事業所にとっても人材定着の重要な施策になります。

第38回介護福祉士国家試験の全体合格率は70.1%でした。一方、特定技能1号の受験者に限ると合格率は33.0%にとどまり、全体平均との差が見られます。現場経験だけで合格できる試験ではなく、日本語読解、専門用語、制度理解、過去問対策を計画的に積み上げる必要があります。

この記事では、2026年7月15日時点の公表情報をもとに、介護福祉士受験を定着支援としてどう位置づけるか、受験資格や試験制度、学習ステップ、合格後の登録・在留資格変更までの流れを整理します。

介護福祉士受験は「本人任せ」ではなく定着戦略である

介護分野で特定技能1号人材を受け入れるとき、まず目の前の人員確保に意識が向きがちです。もちろん、特定技能1号は介護現場で働く入口として重要な制度です。一方で、通算在留期間に上限があるため、長く働いてもらうには採用時点から次のキャリアを設計しておく必要があります。

その中心にあるのが、介護福祉士国家試験の受験と合格です。介護福祉士は介護の専門職としての国家資格であり、試験に合格しただけではなく、登録して初めて「介護福祉士」の名称を用いることができます。外国人材の場合、この資格取得は処遇や役割だけでなく、在留資格の選択肢にも関わります。

厚生労働省は、2020年4月1日から、実務経験を経て介護福祉士国家資格を取得した人も、在留資格「介護」への移行対象になると説明しています。つまり、特定技能1号で入職した人材についても、「介護福祉士合格→登録→在留資格『介護』への移行」を見据えれば、5年で関係が終わる採用ではなく、中長期の育成・定着につなげられます。

採用時の見方本人に伝わるメッセージ事業所にとっての意味
5年で終わる人材将来が見えにくい再採用・再教育の負担が残る
資格取得を支援して残ってもらう人材日本で働き続ける道筋が見える経験を積んだ職員の定着につながる

ここで大切なのは、受験を「本人の努力不足・努力次第」と片づけないことです。第38回介護福祉士国家試験では、全体の合格率は70.1%でしたが、特定技能1号の受験者に限ると33.0%でした。現場経験があっても、日本語読解、介護専門用語、制度理解、勤務しながらの学習時間確保という壁があるためです。

だからこそ、事業所側には、入職時から受験資格、実務者研修、学習計画、受験申込、合格後の登録、在留資格変更までを一続きで説明し、伴走する姿勢が求められます。キャリアパスが見えることは、本人にとっては安心材料になり、事業所にとっては「採用した人に長く活躍してもらう」ための現実的な定着施策になります。

介護福祉士受験は本人任せの試験対策ではなく、採用時から在留資格「介護」への移行まで見据える定着戦略です。

最新結果で見る難易度:全体70.1%、特定技能1号33.0%の意味

調査時点の2026年7月15日現在、介護福祉士国家試験の最新実績として見るべきは、第38回試験です。令和7年度試験として2026年1月25日に実施され、2026年3月16日に合格発表が行われました。全体では受験者78,469人、合格者54,987人、合格率70.1%です。

直近5回の合格率を見ると、第34回72.3%、第35回84.3%、第36回82.8%、第37回78.3%、第38回70.1%で推移しています。第38回は近年では低めですが、数字だけを見れば、介護福祉士は国家資格の中でも「計画的に準備すれば合格を狙える水準」と整理できます。

区分受験者数合格者数合格率
第38回 全体78,469人54,987人70.1%
第38回 特定技能1号10,406人3,435人33.0%

一方で、特定技能1号の受験者に限ると、見え方は大きく変わります。第38回は受験者10,406人、合格者3,435人、合格率33.0%。全体の70.1%と比べると、合格率には明確な差があります。第36回38.5%、第37回33.3%、第38回33.0%と、ここ数回は約3割台で推移しています。

さらに、第38回の特定技能1号受験者10,406人は全受験者の約13.3%にあたりますが、合格者3,435人は全合格者の約6.2%にとどまります。受験する外国人材は一定数いるものの、合格まで到達する割合はまだ高くありません。

この差は、介護の現場経験が足りないという単純な話ではありません。外国人材には、日本語の長文読解、介護専門用語、社会保障や介護保険制度の理解、そして勤務しながら学習時間を確保する難しさがあります。日々の業務で利用者対応ができていても、試験では文章を読み、制度や根拠を選択肢から判断する力が求められます。

つまり、全体合格率70.1%だけを見て「本人が頑張れば受かる」と考えるのは危険です。特定技能人材にとって介護福祉士国家試験は、業務経験だけでは足りず、日本語・専門用語・過去問対策を職場と一緒に積み上げる試験です。この33.0%という数字は、受験支援の有無が定着を左右することを示しています。

全体合格率は70.1%でも、特定技能1号は33.0%であり、外国人材には職場ぐるみの計画的な学習支援が必要です。

受験前に押さえるべき資格要件と試験の仕組み

特定技能1号や技能実習で介護現場に就労している外国籍人材が介護福祉士国家試験を目指す場合、原則として「実務経験ルート」での受験になります。これは、介護等の業務に一定期間従事したうえで受験資格を満たすルートです。

ここで注意したいのは、「3年働けば受けられる」と単純に考えないことです。実務経験ルートでは、従業期間3年以上・1,095日以上、かつ従事日数540日以上の介護等業務への従事に加え、実務者研修の修了が必要です。採用時点から、就労開始日、勤務日数、研修受講時期を事業所側も一緒に管理しておくことが重要です。

確認項目実務経験ルートで必要な内容
従業期間3年以上・1,095日以上
従事日数介護等業務に540日以上従事
研修実務者研修を修了
第39回の見込み扱い2027年3月31日までの従事・修了見込みを含む

第39回(令和8年度)介護福祉士国家試験の予定では、試験日は2027年1月31日、受験申込受付期間は2026年7月22日から9月2日までです。合格発表は2027年3月23日にホームページ掲載、結果通知発送は2027年3月26日とされています。ただし、いずれも予定として公表されているため、記事公開時や申込前には、必ず試験センターの最新情報を確認してください。

試験は125問で、出題形式は五肢択一を基本とする多肢選択形式です。問題文だけでなく、図・表・イラスト・グラフ・写真が使われる場合もあります。外国人材にとっては、日本語の読解力に加えて、現場経験を試験問題の場面設定に結びつける力も問われます。

また、外国籍の方または日本に帰化された方は、受験申込時に申請することで、すべての漢字にふりがなが付いた問題用紙の配付と、通常の1.5倍の試験時間延長を受けられます。制度を知らないまま申込を終えると利用できない可能性があるため、本人任せにせず、事業所や支援担当者が申請書類と期限を一緒に確認することが大切です。

受験資格と試験日程は、学習計画だけでなく定着計画そのものに関わります。特定技能人材に「いつ受験できるのか」「それまでに何を終える必要があるのか」を早い段階で共有することが、介護福祉士合格に向けた第一歩になります。

合格基準と科目構成:総点だけでなく「ゼロ点科目」を作らない

介護福祉士国家試験でまず押さえたいのは、「何点取ればよいか」だけではありません。第38回(令和7年度)の合格基準は、125点満点中64点以上、かつ11科目群すべてで得点があることでした。配点は1問1点で、総得点の60%程度を基準に、問題の難易度によって補正されます。

つまり、総点が合格ラインに届いていても、どこかの科目群が0点であれば合格できない仕組みです。特定技能人材の支援では、得意科目で点を積み上げるだけでなく、苦手科目を「最低1点は取れる状態」にしておくことが重要です。現場経験がある人ほど生活支援技術や介護過程に寄りやすいため、制度・医療・長文読解を後回しにしない設計が必要です。

パート主な科目外国人材が早めに対策したい点
Aパート人間の尊厳と自立、介護の基本、社会の理解、人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術、生活支援技術特に「社会の理解」は制度用語が多く、日本語の意味を覚えるだけでなく、制度の関係性を整理する必要があります。
Bパートこころとからだのしくみ、発達と老化の理解、認知症の理解、障害の理解、医療的ケア身体構造、疾病、医療的ケアの用語が多く、漢字・カタカナ語・専門概念をセットで学ぶことが大切です。
Cパート介護過程、総合問題総合問題は長文事例を読み、利用者の状態や支援方針を判断するため、読解スピードと設問慣れが問われます。

外国人材にとって壁になりやすいのは、知識そのものよりも「日本語で問われる専門知識」です。たとえば「社会の理解」は介護保険や社会保障の制度名が多く、「こころとからだのしくみ」「医療的ケア」は身体部位や医療行為に関する語彙が増えます。さらに「総合問題」は、利用者の背景を読み取る長文事例が中心になるため、早い段階から過去問で文章量に慣れておく必要があります。

また、第38回からはパート別合格が導入されました。第38回のパート別合格者数は、Aパート3,935人、Bパート1,509人、Cパート6,181人です。合格したパートの受験免除は翌年・翌々年まで有効で、再受験時には全パートを受けるか、不合格パートのみを受けるか選択できます。これは不合格を前提にする制度ではなく、働きながら受験する人の学習を継続しやすくする仕組みと捉えるべきです。

事業所側は、模試や過去問の結果を「合計点」だけで見ないことが大切です。11科目群のうち、どこが無得点になりやすいのか、A・B・Cのどのパートに弱点があるのかを見える化すれば、本人任せの勉強から、定着につながる伴走型の受験支援に変えられます。

合格に近づく7つの勉強ステップ

特定技能人材の介護福祉士受験は、試験直前の詰め込みでは間に合いません。第38回では特定技能1号の合格率が33.0%にとどまっており、日本語、専門用語、制度理解、勤務しながらの学習時間確保を、採用時から設計する必要があります。

  • 1. 受験資格を逆算する
    実務経験ルートでは、従業期間3年以上・1,095日以上、従事日数540日以上、実務者研修修了が必要です。入国日、就労開始日、従事日数、実務者研修の受講時期、受験申込時期を一覧化し、本人と事業所で共有します。
  • 2. 日本語と介護専門用語の土台をつくる
    厚生労働省が案内する「にほんごをまなぼう」、介護特定技能評価試験学習用テキスト、外国人のための介護福祉専門用語集、外国人のための介護福祉士国家試験一問一答などを使い、現場語と試験語の差を埋めます。
  • 3. 11科目群を一通り回す
    介護福祉士国家試験は総点だけでなく、11科目群すべてで得点が必要です。制度用語が多い「社会の理解」、身体・医療系の「こころとからだのしくみ」「医療的ケア」、長文事例の「総合問題」は早めに着手します。
  • 4. 公式過去問で形式に慣れる
    試験センターは第38回、第37回、第36回などの試験問題、ふりがな付き試験問題、合格基準・正答一覧を公開しています。まず公式過去問を解き、五肢択一や図表・事例問題の読み方に慣れることが確実です。
  • 5. パート別に弱点を管理する
    第39回以降は、条件に該当する人が全パート受験か不合格パートのみ受験かを選べます。ただし、不合格パートの一部だけを受けることはできません。A・B・Cのどこで失点しているかを記録しておきます。
  • 6. 模試で時間配分と読解を鍛える
    第39回の全パート受験は午前10時00分から11時45分、午後13時40分から15時35分の予定です。外国籍の方等は申請により通常の1.5倍の時間延長を受けられますが、長文事例を読み切る練習は欠かせません。
  • 7. 合格後の登録・在留資格変更まで支援する
    合格しても、登録しなければ「介護福祉士」の名称は使えません。合格証書、登録申請、在留資格「介護」への変更、法人内での処遇・役割変更まで説明しておくことで、資格取得が離職ではなく定着につながります。

モデルとしては、受験2年前にN3相当の日本語と介護用語、1年前に実務者研修と全科目インプット、6か月前に過去問1周目、3か月前に過去問2〜3周目と模試、直前期にゼロ点科目防止と総合問題対策へ進む流れが現実的です。

職場ができる支援:学習時間、配慮申請、外部講座の活用

介護福祉士国家試験の支援は、本人のやる気に任せるだけでは続きません。第38回では、社会福祉施設の介護職員等が受験者48,612人、合格者33,893人、合格率69.7%、老人福祉施設の介護職員等が受験者41,704人、合格者28,041人、合格率67.2%でした。現場で働きながら合格している人は多く、だからこそ職場の設計が結果を左右します。

まず取り組みたいのは、勤務シフトと学習時間をセットで考えることです。夜勤明けに長時間の学習を求めない、実務者研修の受講日を勤務表に早めに反映する、試験前の数か月は過去問に集中できる日をつくるなど、無理なく続けられる形に落とし込みます。

支援項目職場でできる具体策
学習時間固定の自習時間、試験前のシフト配慮、夜勤明け学習の負担軽減
実務者研修受講日の勤務調整、修了見込み時期の確認、申込期限の共有
過去問対策週1回の学習会、先輩職員による解説、苦手科目の声かけ

外国籍の方、または日本に帰化された方には、受験申込時の配慮申請も重要です。申請により、すべての漢字にふりがなが付いた問題用紙の配付と、通常の1.5倍の試験時間延長を受けられます。EPA介護福祉士候補者は、同様の配慮が申請不要で行われます。申込時に必要なため、担当者が早めに確認しておくべきです。

外部講座の活用も有効です。日本介護福祉士会は、厚生労働省補助事業として外国人介護人材向けの介護福祉士国家資格取得支援講座を実施しています。受講料は無料、全5回で、原則として令和8・9年度の受験予定者、日本語能力試験N3程度以上、全5回受講できる方が対象です。募集状況や日程は最新情報を確認し、該当者には早めに案内しましょう。

上司や先輩の「勉強している?」という一言も、孤立を防ぐ支援になります。試験勉強は長期戦です。学習時間、配慮申請、外部講座を職場の仕組みに組み込み、合格まで伴走することが、特定技能人材の定着にもつながります。

合格後の登録と在留資格変更まで見据える

介護福祉士国家試験は、合格して終わりではありません。合格後に登録して初めて「介護福祉士」の名称を用いることができます。登録しないままでは、試験に合格していても介護福祉士を名乗ることはできません。定着支援として考えるなら、合格発表後の登録申請までを一連のステップとして設計しておく必要があります。

特に外国人材の場合、合格後は本人の達成感が大きい一方で、書類準備や期限管理でつまずくことがあります。事業所側は、合格証書、登録申請書類、本人確認書類、住所変更の有無などを確認し、いつまでに何を提出するかを一緒に整理しておくと安心です。資格取得後の職務範囲、手当、リーダー候補としての育成方針も同時に伝えることで、「合格したら転職」ではなく「この職場で次の役割を担う」という見通しにつながります。

外国人材の定着という観点では、在留資格の見通しも重要です。厚生労働省は、2020年4月1日から、実務経験を経て介護福祉士国家資格を取得した方も在留資格「介護」への移行対象になっていると説明しています。在留資格「介護」は、介護福祉士の資格を持つ外国人が介護等の業務に従事するための在留資格です。採用時から「特定技能1号で働く」だけでなく、「介護福祉士合格、登録、在留資格『介護』への変更」までをキャリアパスとして示すことが、長期定着の土台になります。

段階事業所が確認したいこと
合格発表後合格証書の確認、登録申請の必要書類、提出予定日の共有
登録完了後介護福祉士としての役割、処遇、教育担当やリーダー候補としての位置づけ
在留資格変更在留資格「介護」への変更可否、申請時期、必要書類の最新確認

なお、第38回から導入されたパート合格制度に関連して、介護分野の特定技能1号外国人については、通算在留期間延長に関する措置も示されています。第38回では、合格基準点64点の8割以上である52点以上、かつ1パート以上合格していることが条件とされ、申請期限は2026年4月30日消印有効でした。これはすでに過去の期限です。今後の試験回で同様の手続きが必要な場合は、厚生労働省の最新通知を必ず確認してください。

また、この延長措置は「特定技能1号」の在留資格に係る在留申請が対象です。技能実習や特定活動(EPA介護福祉士候補者)などは対象外とされています。制度を取り違えると本人の在留計画に影響するため、登録支援機関や行政書士等と連携しながら、合格後の資格登録と在留資格変更をセットで管理することが望ましいです。

まとめ

介護福祉士受験は、特定技能介護人材にとって単なる資格試験ではなく、定着を左右する大きなステップです。合格し、登録まで進むことで「介護福祉士」の名称を使えるようになり、その先には在留資格「介護」への移行という長期キャリアの選択肢も見えてきます。

第38回介護福祉士国家試験の全体合格率は70.1%で、数字だけを見ると比較的合格を狙いやすい試験に見えるかもしれません。しかし、特定技能1号の受験者に限ると合格率は33.0%です。外国人材には、日本語読解、介護の専門用語、制度理解、さらに勤務しながら学習時間を確保するという複合的な壁があります。

そのため、受験対策は直前期だけでなく、採用時から逆算して設計することが重要です。モデルとしては、次のような流れで本人と職場が進捗を共有すると、学習の遅れや申込漏れを防ぎやすくなります。

時期主な取り組み
受験2年前N2相当の日本語力(漢字学習)と介護用語の基礎づくり
受験1年前実務者研修の受講と11科目群の全体インプット
受験6か月前公式過去問1周目、苦手科目と読解課題の把握
受験3か月前過去問2〜3周目、模試、時間配分の練習
直前期11科目群のゼロ点防止と総合問題対策
合格後登録申請、在留資格変更、処遇・役割への反映

特に第38回の合格基準は125点満点中64点以上、かつ11科目群すべてで得点があることでした。総点だけでなく「ゼロ点科目を作らない」視点が必要です。図表や事例問題に慣れること、ふりがな付き問題用紙や試験時間延長など外国籍の方が申請できる配慮も、早めに確認しておきたいポイントです。

採用時に「国家資格取得を支援し、長く活躍してもらう」キャリアパスを示し、入職後は日本語、専門用語、実務者研修、過去問学習、受験申込、合格後の登録・在留資格変更まで伴走する。これが、介護福祉士合格を離職のきっかけではなく、職場への定着につなげる鍵になります。