特定技能制度に、新たに「物流倉庫分野」が追加されました。物流倉庫はEC市場の拡大や保管需要の増加を背景に、人手不足が深刻化している分野の一つです。今後、外国人材の受入れを検討する倉庫業・物流関連事業者にとって、制度の内容を早めに把握しておくことが重要になります。

公的情報では、育成就労制度の運用開始は2027年4月1日とされていますが、物流倉庫分野の特定技能1号評価試験の開始時期は、2026年6月時点で未定とされています。

この記事では、物流倉庫分野の追加決定の経緯、対象業務、受入れ可能な事業者、外国人材に求められる試験・日本語水準、企業側の準備事項を、公表情報に基づいて分かりやすく整理します。

物流倉庫分野は何が決まったのか

今回新たに制度上の分野として位置づけられた正式名称は「物流倉庫分野」です。2026年1月23日の閣議決定により、特定技能制度の「特定産業分野」と、育成就労制度の「育成就労産業分野」の双方に追加されました。つまり、物流倉庫は外国人材の受入れ対象として、国の制度上明確に整理されたことになります。

育成就労制度そのものの運用開始日が2027年4月1日とされている一方で、物流倉庫分野の特定技能1号については、評価試験の開始時期が2026年6月時点で「調整中・未定」と案内されています。

区分現時点で決まっていること
分野名物流倉庫分野
制度上の位置づけ特定技能制度の特定産業分野、育成就労制度の育成就労産業分野に追加
決定日2026年1月23日の閣議決定
育成就労制度運用開始は2027年4月1日
特定技能1号評価試験の開始時期は2026年6月時点で未定

上記踏まえ、「物流倉庫分野は追加決定済み。育成就労は2027年4月1日開始。特定技能1号は試験日程の公表後に実質的な受入れ時期が見えてくる」と整理するのが正確です。

また、物流倉庫分野で受入れが想定されている在留資格は、現時点では「育成就労」と「特定技能1号」です。国土交通省は2026年6月時点で「特定技能2号の受け入れはありません」と案内しており、長期就労や家族帯同の可否を含めたキャリア設計は、今後の制度変更を確認しながら考える必要があります。

物流倉庫分野の特定技能1号・育成就労の分野追加は決定。評価試験開始時期は未公表であるため、特定技能1号試験ルートでの受け入れ開始はまだ見込めない状況です。

なぜ物流倉庫が新分野に追加されたのか

物流倉庫分野が特定技能の新分野に加わった背景には、単なる一時的な人手不足ではなく、倉庫現場にかかる仕事量そのものの増加があります。EC市場の拡大などにより、商品を保管し、必要なタイミングで出荷する需要が高まり、物流倉庫の面積や稼働率も上昇してきました。

分野別運用方針では、普通倉庫の従業員1人当たり所管面積、つまり1人の従業員が実質的に受け持つ倉庫面積が、2019年度の633㎡から2023年度には674㎡へ増えたことが示されています。増加率は約6%で、現場では同じ人数でより広い範囲を管理する負荷が強まっていると読めます。

項目公表されている状況
従業員1人当たり所管面積2019年度633㎡から2023年度674㎡へ約6%増加
2024年時点の人手不足数約1万9,000人
2028年度の人手不足見込みなお約1万8,300人

人材面では、定年退職者数の多さに加え、新規採用の難しさも課題です。倉庫内作業は、入出庫、検品、ピッキング、格納、流通加工など、日々の生活や企業活動を支える実務そのものです。しかし、必要な人数を国内採用だけで継続的に確保することは、地域や職種によって難しくなっています。

重要なのは、外国人材の受入れが「人手不足をそのまま埋める手段」としてだけ位置づけられているわけではない点です。分野別運用方針では、女性・高齢者・就職困難者等の就業推進、職場環境や処遇の改善、安全衛生対策といった国内人材確保策も並行して掲げられています。

さらに、物流倉庫ではDX化による省力化も前提とされています。ピッキングやパレタイズを行うロボット、無人フォークリフト、無人搬送車、WMSなどの情報システムを活用しながら、生産性と安全性を高める方向です。そのうえで、なお不足する人材を補う仕組みとして、特定技能や育成就労による外国人材の受入れが制度化されたといえます。

物流倉庫は、食品、日用品、医薬品、EC商品などを社会に届けるための基盤であり、国民生活に不可欠なインフラです。今回の新分野追加は、倉庫業界だけの話ではなく、暮らしを支える物流網を維持するための政策対応として見る必要があります。

物流倉庫分野の追加は、保管需要の拡大と構造的な人手不足に対し、国内人材確保策・DX化と並行して外国人材受入れを位置づけるものです。

対象業務と受入れ可能な事業者

物流倉庫分野で対象となる業務は、物流倉庫で行われる貨物の入出庫、保管、その他の各種倉庫作業に限られます。つまり、倉庫内で荷物を受け入れ、保管し、出荷につなげる一連の現場作業が中心です。

主な業務例としては、入出庫貨物の受渡し・検品、倉庫内での貨物の移動、保管庫への格納、注文や出荷指示に応じて商品を取り出すピッキング、流通加工などが挙げられています。現場の実態に近い幅広い作業が含まれる一方で、あくまで「物流倉庫での倉庫作業」であることが前提です。

特に注意したいのが流通加工の範囲です。ここでいう流通加工は、小分け再包装、タグ取付け、ラベル貼り、セット組みなど、物流上必要な加工を指します。商品そのものの機能を完成させたり、性能を高めたりする作業は製造工程に当たり、物流倉庫分野の流通加工には含まれません。

また、付随的な関連業務として、事務所への連絡・報告、作業場所の整理整頓・清掃、台風などに備えた貨物移動や雨水侵入防止措置、安全衛生・懇談会・教育訓練などの会議参加も想定されています。ただし、これらは本来業務に付随する範囲で行うものです。

類型受入れ可能な事業者
A倉庫業登録を受けた倉庫業者で、自ら倉庫作業を行う者
B倉庫業者が営業に使用する倉庫で、委託を受けて倉庫作業を行う者
C一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可を受け、その占有する倉庫で倉庫作業を行う者等

受入れ可能な事業者は、上記の3類型に整理されています。ポイントは、単に倉庫のような場所で作業していればよいわけではなく、倉庫業登録、倉庫業者からの委託関係、貨物自動車運送事業の許可と占有倉庫など、事業者側の位置づけが問われることです。

実務上は、自社がA・B・Cのどれに該当するのか、作業場所が制度上の対象となる倉庫に当たるのか、外国人に任せる業務が製造工程や対象外業務に広がっていないかを、受入れ準備の初期段階で確認しておくことが重要です。

在留資格、試験、日本語水準の整理

物流倉庫分野で現時点に用意されている受入れルートは、「育成就労」と「特定技能1号」です。

国土交通省は2026年6月時点で、物流倉庫分野について「特定技能2号の受け入れはありません」と案内しています。したがって、長期的なキャリア設計を考える場合も、まずは育成就労から特定技能1号へ進む流れを前提に整理する必要があります。

特定技能1号で受け入れる場合、技能面では「物流倉庫分野特定技能1号評価試験」への合格が必要です。ただし、2026年6月時点では試験実施要領や試験開始時期は調整中・未定とされています。採用計画を立てる際は、試験日程、実施国、申込方法などを最新の公表情報で確認することが欠かせません。

区分必要な試験・日本語水準
特定技能1号物流倉庫分野特定技能1号評価試験に合格。日本語は「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上。例としてJLPT N4等。
育成就労の就労開始前A1相当以上、または同等水準の日本語講習の受講。例としてJLPT N5等。
育成就労開始後1年まで物流倉庫分野育成就労評価試験(初級)と、A1相当の日本語水準。
育成就労終了時まで物流倉庫分野特定技能1号評価試験と、A2.2相当以上の日本語水準。

ここでいう「日本語教育の参照枠」は、日本語でどの程度コミュニケーションできるかを段階的に示す基準です。A1はごく基本的なやり取り、A2は身近な場面での簡単な意思疎通ができる水準と理解するとよいでしょう。物流倉庫では安全確認、作業指示、報告・連絡が日常的に発生するため、試験合格だけでなく、現場で通じる日本語教育の設計が重要になります。

育成就労は、入国時点で完成された人材を受け入れる制度ではなく、一定期間をかけて技能と日本語を育て、最終的に特定技能1号水準へつなげる設計です。そのため企業側は、配属後のOJT、初級試験対策、日本語学習の時間確保を、採用後に慌てて考えるのではなく、受入れ計画の段階から組み込んでおく必要があります。

本人意向による転籍についても確認が必要です。物流倉庫分野では転籍制限期間が1年とされ、転籍には「物流倉庫分野育成就労評価試験(初級)」への合格と、A2.1相当以上の日本語能力が求められます。受入れ企業にとっては、定着支援と教育体制の質が、今後ますます実務上の重要ポイントになります。

受入れ企業に求められる主な要件

物流倉庫分野で外国人材を受け入れる企業は、まず雇用形態に注意が必要です。特定技能1号、育成就労のいずれも、分野別運用方針上は「直接雇用」に限られます。倉庫現場では外部人材や請負を活用する場面も多いものの、派遣形態で特定技能外国人・育成就労外国人を受け入れることは認められていません。

加えて、物流倉庫分野には独自の上乗せ要件があります。中心になるのが、入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能を持つ情報システム、いわゆるWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)等の利活用です。単に人手を補う制度ではなく、一定の業務管理体制を備えた事業所で受け入れる設計になっています。

要件実務上のポイント
直接雇用特定技能1号・育成就労ともに派遣形態は不可
WMS等の利活用入庫・在庫・出庫管理の機能を有する情報システムが必要
生産性・安全衛生向上の機器等WMS等と連携し、機能を拡充する機器または情報システムを継続利用
所有要件受入れ機関が所有していなくても、就業事業所で利用できればよい

もう一つのポイントは、WMS等だけで足りるわけではないことです。受入れ事業者は、生産性および労働安全衛生の向上に資する機器または情報システムも継続的に利活用する必要があります。想定されるのは、作業の省力化やミス防止、安全確認に役立つ機器・システムで、入庫・在庫・出庫管理システムと連携して機能を広げるものとされています。

ただし、これらの情報システムは、必ずしも受入れ企業自身が所有している必要はありません。国土交通省は、外国人が実際に就業する事業所で利用できる状態にあればよいと説明しています。委託先倉庫や共同利用システムを使う現場では、「誰が所有しているか」よりも「その事業所で継続的に使えるか」を確認することが重要です。

特定技能所属機関には、物流倉庫分野の特定技能協議会への参加、協議会で調った事項への対応、協議会や国土交通省等による調査・指導への協力も求められます。2026年6月時点で協議会は設置に向けて調整中とされているため、加入受付や具体的な手続きは最新の公表情報を確認する必要があります。

1号特定技能外国人支援計画の全部を登録支援機関へ委託する場合は、その登録支援機関側にも、協議会構成員であることや国土交通省等への協力といった条件がかかります。また、類型B、つまり倉庫業者から委託を受けて倉庫作業を行う事業者が受け入れる場合は、委託元倉庫業者と雇用継続について共同で責任を持つ内容の協議書を取り交わす必要があります。

今後の見通しと実務への影響

物流倉庫分野は、2026年1月23日の閣議決定で特定技能制度と育成就労制度の対象に追加されました。育成就労制度の運用開始が2027年4月1日である一方、特定技能1号の受入れに必要な評価試験は、2026年6月時点で試験実施要領が調整中、試験開始時期も未定です。

そのため、特定技能1号の受け入れについては試験日程、受験申込方法、実施国、試験形式などの公表を待つ必要があります。海外からの採用計画を立てる場合も、試験合格者の発生時期を前提にしすぎず、最新の国土交通省・出入国在留管理庁の情報を確認しながら、採用時期に幅を持たせることが重要です。

また、物流倉庫分野の分野別協議会も、2026年6月時点では設置に向けて調整中です。特定技能所属機関には協議会への加入が求められますが、加入要件や受付開始時期は未定で、決まり次第、国土交通省ページで公表される予定です。登録支援機関に支援を委託する場合も、協議会との関係を確認する必要があります。

項目公表されている上限
物流倉庫分野全体2026年度から2028年度までの3年間で1万8,300人
1号特定技能外国人2026年度から3年間で1万1,400人
育成就労外国人2027年度から2年間で6,900人

受入れ見込数については、上限管理の仕組みも設けられています。受入れ人数が見込数を超えるおそれがある場合や、必要な人材が確保されたと認められる場合には、国土交通大臣が法務大臣等に対し、在留資格認定証明書の交付停止や育成就労認定の停止を求めることができます。採用できる枠が常に開いている制度ではない、という点は押さえておきたいところです。

制度面では、2026年6月26日に、特定技能向けの令和8年国土交通省告示第787号、育成就労向けの令和8年国土交通省告示第788号が公布されました。今後は、試験、協議会、申請実務の詳細が段階的に整っていくと考えられます。

受入れを検討する企業は、今のうちに現場の棚卸しを進めるべきです。具体的には、WMS等の入庫・在庫・出庫管理システムの利用状況、対象業務に該当する作業範囲、直接雇用体制、教育訓練、安全衛生、実務経験証明を交付できる記録管理体制などです。制度開始後に慌てて整えるのではなく、倉庫現場の運用と在留資格上の要件を早めに接続しておくことが、スムーズな受入れにつながります。

まとめ

物流倉庫分野は、2026年1月23日の閣議決定により、特定技能制度の特定産業分野と、育成就労制度の育成就労産業分野に追加された新分野です。

2027年4月1日に運用開始予定なのは育成就労制度であり、特定技能1号の実質的な受入れは、評価試験の実施要領や日程が公表されてから具体化すると見るべきです。

項目現時点の整理
制度上の位置づけ特定技能1号と育成就労の対象分野。特定技能2号の受入れは案内されていません。
開始時期育成就労は2027年4月1日開始予定。特定技能1号は試験情報の公表後に具体化します。
対象業務物流倉庫内の入出庫、保管、検品、貨物移動、ピッキング、流通加工などに限られます。

受入れ企業側では、単に人材を採用できる制度が増えたと捉えるだけでは不十分です。雇用形態は直接雇用に限られ、対象となる事業者類型にも条件があります。また、入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能を持つWMS等の利活用、労働安全衛生や生産性向上に資する機器・システムの継続的な活用、分野別協議会への対応など、物流倉庫分野ならではの上乗せ要件も確認が必要です。

特に注意したいのは、対象業務の範囲です。流通加工には小分け再包装、タグ取付け、ラベル貼り、セット組み等が含まれますが、商品そのものの機能を完成・向上させる製造工程は含まれません。現場で担当させる作業が制度上の物流倉庫業務に収まるか、職務分掌や作業手順の段階で整理しておくことが重要です。

今後は、国土交通省が公表する特定技能1号評価試験の実施要領、試験日程、協議会の加入手続、運用細則を確認しながら準備を進める段階です。採用計画だけでなく、教育体制、母国語等を踏まえた安全衛生指導、生活支援、在留期限管理、実務経験証明への対応まで含めて、受入れ後に現場が回る仕組みを整えておくことが、物流倉庫分野での外国人材活用の出発点になります。