厚生労働省は、令和8年8月31日に「令和7年外国人雇用実態調査」の結果を公表しました。これは、令和7年9月30日現在の状況を調べたもので、記事では「令和7年調査=2025年時点の実態、2026年8月31日公表」と整理して読み解きます。
今回注目したいのは、外国人常用労働者の国籍・地域別構成比です。ベトナムは26.5%で最多を維持した一方、前年の32.4%から5.9ポイント低下しました。外国人材市場全体が拡大するなかで、ベトナムへの集中度が下がり、インドネシア、ミャンマー、フィリピンなどの存在感が高まっています。
本記事では、「ベトナム採用をやめる」という話ではなく、ベトナムを重要な採用国として位置づけながら、複数国から安定的に紹介を受けられる体制をどう考えるべきかを整理します。
令和7年調査で見えた「ベトナム一強」の変化
厚生労働省は、令和8年8月31日(月)に「令和7年外国人雇用実態調査」の結果を公表しました。これは、令和7年9月30日現在の状況について、令和7年10月から11月にかけて調査したものです。つまり、令和7年調査は「2025年時点の実態を、2026年8月31日に公表した調査」と見ると分かりやすいでしょう。
同調査は令和5年から実施されており、外国人労働者を雇用する事業所の雇用形態、賃金、雇用管理に加え、外国人労働者本人の入職経路や現在の雇用状況などを把握する目的があります。単なる人数統計ではなく、外国人雇用の現場がどのように変化しているかを読み解くための調査です。
調査対象は、雇用保険被保険者5人以上で、かつ外国人労働者を1人以上雇用する全国の事業所と、そこに雇用される外国人常用労働者です。令和7年調査では、9,016事業所のうち有効回答3,919事業所、45,198人のうち有効回答14,248人の結果をもとに集計されています。
| 調査年 | ベトナムの構成比 | 見方 |
|---|---|---|
| 令和5年 | 29.8% | 最多国として大きな存在感 |
| 令和6年 | 32.4% | 構成比がさらに上昇 |
| 令和7年 | 26.5% | 最多は維持しつつ、前年から5.9ポイント低下 |
本稿で注目したいのは、外国人常用労働者の国籍・地域別構成比におけるベトナムの推移です。令和7年調査でもベトナムは26.5%で最多を維持していますが、前年の32.4%から5.9ポイント低下しました。これまで外国人採用、とくに技能実習や特定技能の現場では「まずベトナム」という感覚を持つ企業も少なくありませんでしたが、その前提に少し変化が見え始めています。
ただし、ここで注意したいのは、この26.5%という数字はサンプル調査に基づく「構成比」であり、ベトナム人労働者の実人数がそのまま減ったことを示すものではない、という点です。読み取るべきは「ベトナム採用が終わった」という話ではなく、外国人材全体の広がりの中で、ベトナムへの集中度が下がりつつあるという変化です。
だからこそ、企業にとって重要なのは、ベトナムとの採用ルートを維持しながら、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、ネパールなど複数国から人材を紹介できる体制を持つことです。令和7年調査は、その必要性を考える入口になるデータだといえます。
上位国の顔ぶれはどう変わったか
令和7年調査、つまり2025年9月30日時点の実態を2026年8月31日に公表した調査では、外国人常用労働者の国籍・地域別構成比に変化が見られました。最多は引き続きベトナムですが、構成比は26.5%。次いで中国(香港・マカオ含む)14.7%、フィリピン10.5%、ミャンマー10.2%、インドネシア10.1%の順です。
| 順位 | 国籍・地域 | 構成比 |
|---|---|---|
| 1位 | ベトナム | 26.5% |
| 2位 | 中国(香港・マカオ含む) | 14.7% |
| 3位 | フィリピン | 10.5% |
| 4位 | ミャンマー | 10.2% |
| 5位 | インドネシア | 10.1% |
ここで注目したいのは、上位5か国のうちミャンマーとインドネシアがいずれも10%台に乗っている点です。ベトナムが最大の採用候補国である状況は変わらない一方で、企業が人材を探す国・地域は少しずつ広がっていると読めます。
在留資格別に見ると、傾向はさらに分かれます。在留資格とは、日本で行える活動や働き方を示す資格のことです。「専門的・技術的分野」ではベトナム32.8%、中国15.2%、インドネシア12.2%でした。技能実習ではベトナム44.1%、インドネシア17.6%、ミャンマー16.3%。特定技能ではベトナム37.8%、インドネシア22.1%、ミャンマー17.7%となっています。
| 在留資格区分 | 上位の構成比 |
|---|---|
| 専門的・技術的分野 | ベトナム32.8%、中国15.2%、インドネシア12.2% |
| 技能実習 | ベトナム44.1%、インドネシア17.6%、ミャンマー16.3% |
| 特定技能 | ベトナム37.8%、インドネシア22.1%、ミャンマー17.7% |
技能実習・特定技能の現場では、依然としてベトナム比率が高いことは押さえておく必要があります。ただし、インドネシアとミャンマーの存在感は明らかに強まっており、「ベトナム中心」から「ベトナムを軸に複数国を組み合わせる」採用へ移りつつあることがうかがえます。
前年との比較では、専門的・技術的分野のベトナム比率が令和6年の45.4%から令和7年は32.8%へ、特定技能でも59.5%から37.8%へ低下しています。ただし、この調査だけで原因を断定することはできません。採用競争、賃金水準、送出国側の事情、制度移行への対応など、複数の要因を慎重に見ていく必要があります。
「ベトナムが減った」ではなく「集中度が下がった」と見るべき理由
令和7年調査(2025年時点の実態、2026年8月31日公表)では、外国人常用労働者の国籍・地域別構成比でベトナムが26.5%となり、令和6年調査の32.4%から5.9ポイント低下しました。この数字だけを見ると、「ベトナム人材が減った」「ベトナム採用の時代が終わった」と受け止めたくなるかもしれません。
しかし、ここで注意したいのは、令和7年外国人雇用実態調査がサンプル調査であり、示されているのは構成比だという点です。つまり、今回の26.5%は、ベトナム人労働者の実人数がそのまま減少したことを直接示す数字ではありません。
実人数に近い動きを見るうえでは、厚生労働省の別統計である「外国人雇用状況」の届出状況もあわせて確認する必要があります。同統計では、令和7年10月末時点の外国人労働者数は2,571,037人で、前年比268,450人増。届出義務化以降で過去最多となっています。
| 項目 | 令和7年10月末時点の状況 |
|---|---|
| 外国人労働者数 | 2,571,037人、前年比268,450人増 |
| ベトナム人労働者数 | 605,906人で国籍別最多、全体の23.6% |
| 増加率が大きい主な国 | ミャンマー42.5%増、インドネシア34.6%増、スリランカ28.9%増 |
このように見ると、ベトナムは引き続き最大の採用国です。したがって、今回の変化は「ベトナム採用をやめるべき」という話ではなく、外国人材市場全体が拡大するなかで、ベトナムへの集中度が下がり、他国の存在感が高まっていると捉えるのが自然です。
特に、ミャンマー、インドネシア、スリランカなどの伸びは、採用チャネルを一国に依存しないことの重要性を示しています。ベトナム人材の採用力を維持しながら、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、ネパールなど複数国から紹介を受けられる体制を持つことが、今後の安定採用につながります。
もちろん、構成比低下の背景を断定することはできません。採用競争、賃金水準、送出国側の事情、技能実習から育成就労への制度移行を見据えた対応など、複数の要因が考えられます。ただし、公的資料から確実に言えるのは、ベトナムの構成比が下がったこと、そして他国の伸長が目立っていることまでです。
多国籍採用が必要になる背景:人手不足と多様性の両面から
令和7年調査、つまり2025年時点の実態を2026年8月31日に公表した厚生労働省の調査では、外国人労働者を雇用する理由として最も多かったのは「労働力不足の解消・緩和のため」68.2%でした。まず確認すべきは、外国人雇用が多くの事業所にとって、現実的な人手不足対策になっているという点です。
一方で、外国人雇用の意味は「欠員を埋めること」だけではありません。同調査では「日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して」が56.2%、「事業所の国際化、多様性の向上を図るため」が18.1%となっています。現場の戦力として育成し、職場に新しい視点や文化を取り入れる動きも、少しずつ広がっていると見られます。
| 雇用する理由 | 割合 | 読み取り方 |
|---|---|---|
| 労働力不足の解消・緩和のため | 68.2% | 人手不足対応が中心 |
| 日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して | 56.2% | 単なる補充ではなく戦力化を期待 |
| 事業所の国際化、多様性の向上を図るため | 18.1% | 職場づくりの観点もある |
この流れの中で、一国集中の採用には注意が必要です。特定の国に採用ルートを偏らせると、現地の経済状況、為替や賃金水準、制度運用、送出機関の状況、他国・他社との採用競争の変化を受けやすくなります。ある国からの採用が一時的に難しくなっただけで、採用計画全体が止まってしまう可能性があるからです。
今回の国籍・地域別構成比では、ベトナムが26.5%で最多を維持する一方、フィリピン、ミャンマー、インドネシアも上位に入っています。したがって、考えるべきは「ベトナム採用をやめる」ことではなく、ベトナムを重要な軸に置きながら、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、ネパールなど複数国の候補者層を比較し、組み合わせることです。
ただし、多国籍採用は「国を増やせば解決」という単純な話ではありません。職種ごとの適性、在留資格、候補者の日本語力、宗教や生活習慣、入社後の教育体制、配属先の受け入れ力まで含めて設計する必要があります。採用ポートフォリオとは、どの国・どの在留資格・どの職種で、どのように人材を確保し育てるかを組み合わせて考えることです。
人手不足への対応と、多様な人材が活躍できる職場づくりは、本来分けて考えるものではありません。複数国からの紹介体制を持つことは、採用リスクを分散するだけでなく、企業が外国人材を長期的な戦力として受け入れるための土台づくりにもつながります。
複数国からの紹介体制をどう整えるか
多国籍採用を進めるうえで、まず押さえたいのは「どこから人材と出会うか」です。令和7年外国人雇用実態調査では、海外から入職した外国人労働者の82.0%が、紹介会社や個人からの紹介等を受けて入職していました。つまり、採用力は求人票の出し方だけでなく、現地・国内にどれだけ信頼できる接点を持てるかに左右されます。
| 入職経路 | 割合 |
|---|---|
| 出身国・地域の紹介会社・個人 | 41.2% |
| 日本国内の紹介会社・個人 | 16.7% |
| 出身国・地域のその他の機関 | 15.1% |
| 出身国・地域の語学学校 | 14.4% |
この内訳を見ると、現地紹介会社だけでなく、語学学校などの教育機関、日本国内の紹介会社とのネットワークが、採用の入口として大きな意味を持っていることが分かります。特にベトナム以外の国に広げる場合、候補者数だけで判断せず、日本語学習の状況、職種理解、来日前の説明内容まで確認できる相手かどうかが重要です。
制度面でも、複数国からの受入れを前提にした枠組みは整っています。特定技能では、出入国在留管理庁が二国間協力覚書を公表しており、フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インド、マレーシア、ラオス、キルギス、タジキスタンなどの情報が掲載されています。二国間協力覚書とは、特定技能外国人の適正な送出し・受入れを進めるための国同士の取り決めです。
技能実習でも、外国人技能実習機構がベトナム以外に、カンボジア、インド、フィリピン、ラオス、モンゴル、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、ブータン、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インドネシア、ネパール、東ティモール、フィジーなどとの二国間取決めを掲載しています。今後の育成就労制度への移行も見据えると、採用先を一国に固定しない設計がより現実的になります。
実務上は、次の4点を意識して紹介体制を組み直すことが大切です。
- 1社・1国に依存せず、複数国・複数チャネルを持つ
- 候補者の日本語教育、技能教育、費用説明の状況を確認する
- 現地側と日本国内側の連携が取れるパートナーを選ぶ
- 採用後の生活支援、職場定着、在留資格管理まで見据える
「ベトナム採用をやめる」のではありません。ベトナムは依然として重要な供給国です。そのうえで、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、ネパールなどを組み合わせ、採用の選択肢を複線化することが、これからの安定採用につながります。
採用チャネルを増やすほど、透明性と受入れ体制が重要になる
ベトナムに限らず、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、ネパールなど複数国から採用する体制を持つことは、採用母集団を広げるうえで有効です。一方で、国や経路が増えるほど、紹介会社や送出機関の選定、本人の費用負担、入国前の説明内容を確認する重要性も高まります。送出機関とは、海外側で候補者の募集や手続き支援を担う機関のことです。
| 確認したい項目 | 令和7年調査の主な結果 |
|---|---|
| 海外から入職した外国人労働者の入国費用 | 「20万円以上40万円未満」21.1%、「40万円以上60万円未満」18.7%、「20万円未満」17.6%の順 |
| 技能実習における高額負担 | 「100万円以上」も15.6% |
| 就労上のトラブル | 「なし」88.5%、「あり」10.0% |
| トラブル内容の最多 | 「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」22.2%。令和6年の18.6%から上昇 |
就労上のトラブル全体は「なし」が多数ですが、実際にトラブルがあった人の内容を見ると、費用の高さが最も多く挙がっています。多国籍採用では「どの国から何人紹介できるか」だけで判断せず、本人が現地でいくら支払っているのか、契約内容を母語で理解できているのか、過度な借金を前提にしていないかまで確認する姿勢が欠かせません。
受入れ後の課題も、採用国が増えるほど複層化します。令和7年調査では、外国人雇用の課題として「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」46.2%が最多で、「在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑」24.8%、「文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある」22.4%、「生活環境の整備にコストがかかる」21.9%が続きました。
- 日本語教育と業務上の日本語サポート
- 住居、生活ルール、行政手続きなどの生活支援
- 母語またはやさしい日本語で相談できる窓口
- 在留資格の期限、変更、更新を管理する仕組み
- 配属先の管理者・先輩社員への異文化理解研修
多国籍採用は、単に採用チャネルを増やす施策ではありません。費用と手続きの透明性を担保し、入社後に安心して働ける受入れ体制まで整えて初めて、採用力と定着力の両方につながります。人数確保を急ぐ局面ほど、信頼できる紹介会社・送出機関を見極めることが重要です。
まとめ
令和7年外国人雇用実態調査(2025年時点の実態、2026年8月31日公表)で最も注目すべき点は、ベトナムが26.5%で最多を維持しながらも、前年の32.4%から5.9ポイント低下したことです。これは、長く続いてきた「ベトナム一強」の構図に変化が出ていることを示す重要なデータといえます。
ただし、この26.5%はサンプル調査に基づく構成比であり、ベトナム人労働者の実人数が減ったことを直接示すものではありません。厚生労働省の別統計「外国人雇用状況」の届出状況では、令和7年10月末時点のベトナム人労働者は605,906人で、国籍別ではなお最多です。
したがって、今回の結果は「ベトナム人材が不要になった」と読むのではなく、「外国人材全体が拡大するなかで、ベトナムへの集中度が下がり、ミャンマー、インドネシア、スリランカなど他国の存在感が増している」と捉えるのが正確です。採用市場は、一国依存から複数国を組み合わせる段階へ移りつつあります。
今後は、令和9年4月から予定される育成就労制度への移行も見据え、採用国、紹介会社、教育機関、支援体制を改めて点検する必要があります。育成就労に関する二国間取決めは、今後も追加・更新される可能性があるため、実際に採用計画を立てる際は、記事公開時点の最新情報を確認することが欠かせません。
- ベトナム採用は継続しつつ、依存度を下げる
- インドネシア、ミャンマー、フィリピン、ネパール等の候補国を比較する
- 紹介会社や送出機関の費用、説明内容、支援品質を確認する
外国人採用の安定性を高めるうえで重要なのは、国を増やすこと自体ではなく、複数国から適正に紹介を受け、入国前教育から入社後の日本語・生活・在留資格管理までを一体で整えることです。ベトナムを軸にしながらも、複線型の紹介体制を持つ企業ほど、これからの採用環境の変化に対応しやすくなるでしょう。