厚生労働省は令和8年8月31日、「令和7年外国人雇用実態調査」の結果を公表しました。調査によると、対象事業所における外国人常用労働者は2,038,878人、約204万人に達しました。前年の約182万人から、概算で約12%増えたことになります。
外国人労働者は、もはや一部の業界だけの例外的な人材ではありません。製造業、サービス業、卸売・小売業、建設業など、人手不足が続く産業では、外国人材の受け入れが事業継続や成長戦略と直結しつつあります。
一方で、調査では日本語コミュニケーション、在留資格申請の事務負担、文化・生活習慣の違い、生活環境整備コストなど、受け入れ後の課題も明らかになりました。本シリーズ第1回では、「採用できるか」だけでなく「定着し、活躍してもらえる体制があるか」という視点から、最新データを読み解きます。
令和7年外国人雇用実態調査とは何か
まず表記を整理します。今回取り上げる調査の公式名称は、厚生労働省の「令和7年外国人雇用実態調査」です。「令和7年度」ではなく、調査名としては公式表記に合わせて「令和7年」と書くのが正確です。厚生労働省が令和8年8月31日に公表したもので、令和7年9月30日現在の状況について、令和7年10〜11月に実施されました。
この調査は、日本で働く外国人の人数や雇用管理、就労実態を把握するためのものです。ただし、すべての企業・すべての外国人労働者を数え上げた全数調査ではありません。対象は「雇用保険被保険者数5人以上」かつ「外国人労働者を1人以上雇用している」全国の事業所で、回答結果をもとに推計した標本調査です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公表機関 | 厚生労働省 |
| 公表日 | 令和8年8月31日 |
| 調査時点 | 令和7年9月30日現在 |
| 実施時期 | 令和7年10〜11月 |
| 事業所調査 | 対象9,016事業所、有効回答3,919事業所 |
| 労働者調査 | 対象45,198人、有効回答14,248人 |
今回のシリーズ第1回では、この調査で示された外国人常用労働者「2,038,878人」、見出し上では「約204万人」という数字を入り口に、外国人雇用の全体像を見ていきます。前年の約182万人からは概算で約12%増となり、外国人材が一部業界だけの例外的な存在ではなくなっていることが分かります。
一方で、この約204万人という数字は「日本で働く外国人全員」を意味するものではありません。厚生労働省の外国人雇用状況届出や、出入国在留管理庁・e-Statの在留外国人統計とは、対象、時点、定義が異なります。したがって、数字を見る際は「どの統計の、何を数えた人数なのか」を分けて読む必要があります。
本記事は3本シリーズの第1回として、単に「外国人労働者が増えた」という事実だけでなく、企業側の受け入れ体制に焦点を当てます。採用ルートの確保だけでなく、在留資格管理、日本語コミュニケーション、生活支援、職場定着までを一体で設計できているか。約204万人時代の外国人雇用では、その問いがより重要になっています。一次情報は厚生労働省の公表ページおよびe-Stat在留外国人統計で確認できます。
外国人労働者は約204万人に——人手不足対策は新しい段階へ
厚生労働省が公表した「令和7年外国人雇用実態調査」では、対象事業所における外国人常用労働者数が2,038,878人となりました。見出しとしては「約204万人」と表現できる規模で、前年の「約182万人」から大きく増えています。
単純に比較すると、増加率は概算で約12%増です。ただし、厚労省の公表本文では「前年比○%」という形ではなく、「約204万人(令和6年 約182万人)」と示されています。そのため、本記事でも「前年比で約12%増」は概算値として扱うのが正確です。
| 項目 | 数値・内容 |
|---|---|
| 令和7年調査 | 外国人常用労働者数 2,038,878人(約204万人) |
| 前年 | 約182万人 |
| 増加率 | 概算で約12%増 |
| 調査時点 | 令和7年9月30日現在 |
ここでいう「常用労働者」とは、継続して雇用されている労働者を指します。また、この約204万人は日本で働く外国人すべてを数えた全数ではありません。調査対象は、雇用保険被保険者数5人以上で、かつ外国人労働者を1人以上雇用している全国の事業所です。対象事業所9,016か所に対し、有効回答は3,919事業所で、標本調査に基づく推計値である点は押さえておく必要があります。
それでも、外国人常用労働者が200万人を超える水準に達した意味は小さくありません。外国人雇用は、もはや一部の大企業や特定業種だけの特別な取り組みではなく、人手不足に向き合う多くの企業に関係する経営課題になっています。
実際に、同調査では外国人を雇用する理由として「労働力不足の解消・緩和のため」が68.2%で最多でした。人材確保の選択肢として外国人採用を検討する企業は、今後さらに増えていくと考えられます。一方で、採用数の拡大は、そのまま受け入れ体制の重要性を高めます。
これから問われるのは、「外国人材を採用できるか」だけではありません。日本語でのコミュニケーション、在留資格の確認・更新管理、生活面の支援、職場での評価や教育の仕組みまで含めて、定着し活躍できる環境を設計できているかが、企業側の競争力を左右する段階に入っています。
どの産業・在留資格で増えているのか
令和7年外国人雇用実態調査を見ると、外国人雇用は特定の業種だけの話ではなくなりつつあります。ただし、増加が目立つ産業には明確な傾向があります。産業別で最も多いのは製造業で、約61万人、全体の30.1%を占めました。
次いで、サービス業(他に分類されないもの)が約33万人・16.3%、卸売業,小売業が約23万人・11.1%、建設業が約18万人・8.7%です。上位4産業だけで全体の約3分の2を占めており、人手不足が深い業種ほど、外国人雇用が一時的な補完ではなく、事業運営の前提として組み込まれていることがうかがえます。
| 産業 | 外国人労働者数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 製造業 | 約61万人 | 30.1% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 約33万人 | 16.3% |
| 卸売業,小売業 | 約23万人 | 11.1% |
| 建設業 | 約18万人 | 8.7% |
在留資格区分別では、「専門的・技術的分野」が858,085人・42.1%で最多です。これは、技術・人文知識・国際業務などの専門職に加え、特定技能なども含む区分です。次いで「身分に基づくもの」が489,102人・24.0%、「技能実習」が441,887人・21.7%となっています。
注目したいのは、専門的・技術的分野の構成比が前年の38.9%から42.1%へ上昇している点です。外国人材の活用は、単に人員を補う段階から、現場での戦力化、専門性の活用、特定技能人材の受け入れ拡大へと軸足が移り始めています。
賃金面でも、在留資格によって論点は異なります。外国人一般労働者の「月間きまって支給する現金給与額」は292.4千円で、前年比6.4%増でした。内訳を見ると、専門的・技術的分野は306.5千円、うち特定技能は254.1千円、技能実習は213.5千円、身分に基づくものは347.2千円です。
つまり、外国人雇用を検討する企業は「外国人材」とひとくくりにせず、産業、職務、在留資格、賃金水準、支援義務を分けて設計する必要があります。採用ルートの確保だけでなく、任せる業務、評価・昇給、在留資格管理、生活支援までを一体で考えることが、定着と活躍の前提になります。
204万人、257万人、412万人——データごとに数字が違う理由
今回のニュースで注意したいのは、「約204万人」という数字を「日本で働く外国人全員」と受け取らないことです。外国人に関する統計は、調査対象、集計時点、数え方がそれぞれ異なります。同じ厚生労働省の資料でも、実態調査と届出集計では数字が変わります。
| 統計 | 対象・性格 | 時点 | 人数 |
|---|---|---|---|
| 令和7年外国人雇用実態調査 | 雇用保険被保険者5人以上で、外国人を雇う事業所を対象にした標本調査・推計 | 令和7年9月30日現在 | 外国人常用労働者 2,038,878人 |
| 外国人雇用状況届出 | すべての事業主に義務付けられた届出の集計 | 令和7年10月末現在 | 外国人労働者 2,571,037人 |
| 在留外国人統計 | 中長期在留者と特別永住者を合わせた在留外国人数 | 令和7年末現在 | 在留外国人数 4,125,395人 |
令和7年外国人雇用実態調査は、厚生労働省が令和8年8月31日に公表した調査です。令和7年10〜11月に、令和7年9月30日現在の状況を調べたもので、対象は9,016事業所、有効回答は3,919事業所です。つまり全数調査ではなく、一定条件の事業所をもとにした推計値です。
一方、厚生労働省の「外国人雇用状況届出」は、外国人を雇い入れた事業主に提出が義務付けられている届出の集計です。令和7年10月末時点の外国人労働者数は2,571,037人で、前年比268,450人増、11.7%増でした。雇用実態調査の約204万人より多いのは、調査の仕組みが違うためです。
さらに、出入国在留管理庁の在留外国人統計では、令和7年末時点の在留外国人数は4,125,395人です。前年末比356,418人増、9.5%増で、初めて400万人を超えました。ただし、ここには留学生、家族滞在、永住者など、就労していない人も含まれます。雇用統計とは見ている範囲が異なります。
整理すると、「働く外国人は200万人台、暮らす外国人は400万人台」と見ると分かりやすいでしょう。企業にとって外国人雇用は人手不足対策であると同時に、地域で暮らす人を受け入れる取り組みでもあります。採用後の在留資格管理、生活支援、日本語コミュニケーションまで含めて考える必要があります。
採用理由は人手不足、課題は受け入れ体制に集中
厚生労働省の「令和7年外国人雇用実態調査」を見ると、外国人を雇用する理由は、まず人手不足にあります。最多は「労働力不足の解消・緩和のため」で68.2%。ただし、理由はそれだけではありません。
| 外国人を雇用する理由 | 割合 |
|---|---|
| 労働力不足の解消・緩和のため | 68.2% |
| 日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して | 56.2% |
| 事業所の国際化、多様性の向上を図るため | 18.1% |
| 日本人にはない知識、技術の活用を期待して | 14.1% |
この結果からは、外国人雇用が「足りない人数を補う採用」から、「現場の中核人材として育てる採用」へ広がりつつあることが分かります。人手不足対策で始めた採用であっても、定着後には戦力化、多様性の向上、専門性の活用まで見据える必要があります。
一方で、受け入れ体制の課題もはっきりしています。外国人雇用に関する課題として最も多いのは「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」で46.2%。次いで、「在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑」24.8%、「文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある」22.4%、「生活環境の整備にコストがかかる」21.9%が続きます。
ここでいう在留資格とは、外国人が日本に滞在し、一定の活動を行うための資格です。就労できる範囲や期間は在留資格ごとに異なるため、採用時の確認、雇用後の届出、更新期限の管理は欠かせません。日本語支援や生活支援と同じく、制度面の管理も受け入れ体制の一部です。
労働者側の調査では、就労上のトラブルについて「なし」が88.5%、「あり」が10.0%でした。割合だけ見れば多数ではありませんが、トラブル内容には「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」22.2%、「どこに相談すればよいかわからなかった」15.8%、「事前の説明以上に高い日本語能力を求められた」11.9%が挙がっています。
企業に求められるのは、採用前の業務内容・賃金・日本語要件の説明を明確にすること、困ったときの相談窓口を用意すること、紹介料や本人負担費用の透明性を確認することです。外国人材は「採れば終わり」ではありません。採用できるかよりも、定着し、安心して働き、活躍できる環境を設計できているかが問われています。
在留外国人が多い地域と、共生社会に必要な視点
外国人雇用を考えるうえでは、「どこで暮らしているか」と「どこで働いているか」を分けて見る必要があります。出入国在留管理庁の在留外国人統計では、令和7年末時点の在留外国人数は東京都801,438人、大阪府375,319人、愛知県357,800人、神奈川県317,353人、埼玉県290,937人が上位です。大都市圏への集中がはっきり表れています。
| データ | 人数が多い地域 |
|---|---|
| 在留外国人数 令和7年末・居住地ベース | 東京都801,438人、大阪府375,319人、愛知県357,800人、神奈川県317,353人、埼玉県290,937人 |
| 外国人労働者数 令和7年10月末・就業地ベース | 東京都652,251人、愛知県249,076人、大阪府208,051人、神奈川県148,888人、埼玉県133,049人、千葉県105,829人、静岡県88,968人、福岡県85,385人、兵庫県77,016人、茨城県67,500人 |
一方、厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況を見ると、順位や規模感は少し変わります。これは、在留外国人数が「日本に住む外国人」を居住地で見る統計であるのに対し、外国人労働者数は「事業主が届け出た就労者」を就業地で集計するためです。たとえば、住まいは埼玉県や千葉県、勤務先は東京都というケースもあります。
また、外国人材の存在感は大都市だけの話ではありません。製造業が集積する愛知県、静岡県、茨城県のほか、農業、食品加工、介護、宿泊など、地域産業を支える現場でも重要性が高まっています。人手不足対策として採用を進める企業ほど、職場の中だけで完結しない支援設計が求められます。
共生社会を成り立たせるには、少なくとも次の6つの視点が欠かせません。
- 職場内の日本語教育や多言語でのコミュニケーション支援
- 労働条件、評価、昇給基準の透明化
- 在留資格、社会保険、税、住居、医療など生活面の支援
- 日本人社員側への異文化理解研修
- 自治体、学校、医療機関、相談窓口との連携
- 不適正なブローカー、高額手数料、説明不足を避ける採用ルート管理
令和7年外国人雇用実態調査でも、日本語コミュニケーションや在留資格申請の事務負担、文化・生活習慣の違いは課題として挙がっています。外国人材を「採用する」だけでなく、地域で暮らし、職場で力を発揮し続けられる環境を整えることが、これからの受け入れ企業の責任です。
まとめ——採用前に問うべきは「受け入れ体制は万全か」
令和7年外国人雇用実態調査で示された外国人常用労働者「約204万人」という数字は、外国人雇用が一部企業の特別な選択ではなく、人手不足時代の現実的な経営課題になったことを物語っています。一方で、採用数が増えるほど、企業に求められる責任も大きくなります。
これから問われるのは、採用ルートを確保できるかだけではありません。雇用管理、生活支援、職場内のコミュニケーション、在留資格管理を一体で設計し、入社後に定着・活躍できる環境を整えられるかです。調査でも、日本語コミュニケーションや在留資格申請の事務負担、文化・生活習慣の違い、生活環境整備のコストが課題として挙がっています。
基本実務として、採用時には在留カードまたは旅券等で就労できる在留資格かを確認する必要があります。また、外国人労働者の雇入れ・離職時には、氏名、在留資格、在留期間などを確認し、ハローワークへ届け出ることが事業主に義務付けられています。雇用後も、在留期限や更新時期を継続的に管理することが欠かせません。
さらに厚生労働省の外国人雇用管理指針では、外国人労働者が能力を発揮できるよう、職場適応を容易にする措置、雇用管理の改善、解雇等により離職する場合の再就職援助などが求められています。受け入れ体制は任意の親切ではなく、法令・指針上も企業が向き合うべきテーマです。
今後は制度変更への備えも重要です。令和8年には外国人雇用管理指針の改正が案内されており、令和9年4月1日には育成就労制度の創設も予定されています。採用を検討する企業は、目の前の人手不足対策だけでなく、制度改正後も継続できる管理体制を今から整えておく必要があります。
外国人労働者204万人、外国人雇用状況届出では257万人、在留外国人数では412万人超。数字は調査対象や時点、定義によって異なりますが、共通しているのは「働く外国人」「暮らす外国人」が増えているという事実です。企業の受け入れ体制づくりは、地域社会との共生にもつながります。
- データリソース:厚生労働省「令和7年外国人雇用実態調査」公表ページ
- 厚生労働省「調査結果の概況」PDF
- e-Stat「外国人雇用実態調査」統計表
- 厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」
- e-Stat「在留外国人統計(旧登録外国人統計)」
なお、在留外国人数などは今後更新される可能性があります。公開前には、入管庁およびe-Statで最新公表値を確認してください。