特定技能外国人をようやく採用できても、早期に離職されてしまえば採用も育成も振り出しに戻ります。転職市場が成熟する今、企業に問われているのは「採用できるか」ではなく「採用した人材に選ばれ続けられるか」です。本記事では、特定技能外国人の定着を実現するための3つの設計ポイント(2号移行支援、住居支援、ルール・文化・日本語の設計)を、制度動向と実務の両面から具体的に解説します。

特定技能外国人の転職市場は着実に拡大しています。転職経験者は全体の22.4%、転職者の75%超が入職から1年以内に離職し、転職先の66%が大都市圏に集中しています。外食業では新規受入停止を受けて国内在留者の売り手市場が形成されつつあり、「採用できれば終わり」ではなく「選ばれ続けなければならない」競争が始まっています。転職市場のデータについては→ 採用した特定技能人材が離れる前に知っておくべきデータとは?で詳しく解説しています。

前提となる転職市場のデータは次の通りです。

データ数値
転職経験者の割合22.4%
1年以内に離職する転職者75%超
大都市圏へ転職する割合66%
特定技能で転職する割合28.4%

出典・資料根拠

  • 出入国在留管理庁「特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議(第10回)」(2025年11月)
  • 特定技能制度関連法令・各分野別運用方針(2025年時点)

育成就労制度が変える「競争の軸」

2027年4月、技能実習制度が育成就労制度に移行します。育成就労(最長3年)→特定技能1号(最長5年)→特定技能2号(上限なし)という一貫したキャリアパスが制度的に整備されることで、外国人材の側に「どこで育ててもらえるか」を選ぶ視点が生まれます。

これは採用競争の軸が変わることを意味します。

従来の競争軸今後の競争軸
採用できるかどうか採用した人材が長く働いてくれるかどうか
賃金水準成長できる環境・キャリアパスの見通し
手続きの速さ2号移行・長期定着支援の充実
求人の魅力採用後に何を提供できるか

「入社してみたら将来が見えなかった」「この会社にいても成長できない」。こうした理由での早期転職を防ぐためには、採用時点で「5年後、10年後の姿」を具体的に見せられるかどうかが鍵になります。

定着施策は外国人だけの話ではない

特定技能外国人の定着施策を「外国人向けの特別対応」として切り分けると、現場の日本人スタッフに「なぜ外国人だけ優遇するのか」という摩擦が生まれることがあります。

明確な評価基準の整備、キャリアパスの可視化、住居・生活支援の充実は、いずれも日本人社員を含む全従業員にとって働きやすさにつながる施策です。「外国人のために整備した仕組みが、職場全体の定着率を上げる」という考え方で取り組むことが、組織として持続的な効果を生みます。

その前提に立ったうえで、特定技能外国人には固有の事情から特に重要となる3つの設計ポイントがあります。

ポイント① 2号移行・長期就労への道筋を採用時に示す

特定技能1号の在留期間は最長5年です。「5年後にどうなるのか」が見えない状態では、外国人材は転職や帰国という選択肢に気持ちが向きやすくなります。採用時から2号移行のロードマップを示すことが、長期的な関係構築の起点になります。

具体的には次の3点を採用前に整理して提示します。

  • 在籍後何年目に2号試験を受けるか
  • 試験対策をどう支援するか(学習環境・費用負担・時間確保)
  • 2号取得後の賃金・役職をどう設計するか

分野によって2号移行の要件は異なります。おおまかな早見表を参考にしてください。

分野2号への道筋主な要件
飲食料品製造業特定技能2号技能試験実務経験3年以上
外食業特定技能2号技能試験+日本語試験実務経験3年以上・N3以上
建設技能検定1級相当実務経験3年以上
介護介護福祉士国家試験→在留資格「介護」実務経験3年以上
自動車運送業2号制度なし(今後の動向に注目)

介護分野は特定技能2号の対象外ですが、国家資格「介護福祉士」を取得することで在留資格「介護」に移行でき、在留期限の上限がなくなります。介護福祉士の取得支援が長期定着の最も有効な手段のひとつです。

「この会社にいれば先が見える」という感覚を持ってもらえるかどうかが、最初の1年の定着を左右します。

ポイント② 住居支援を手厚くする

転職者の66%が都道府県をまたぐという数字が示すとおり、住居は転職の障壁にも、転職の促進剤にもなります。

特定技能外国人は来日直後に独力で住居を確保することが難しい状況にあります。保証人の問題、外国籍者への賃貸拒否、生活備品の準備といったハードルが入社直後に重なります。入国時の社宅提供・保証人対応・生活備品の準備が、採用の決め手になるケースも少なくありません。

住居の安定は定着率に直結します。「住居が不安定だから、転職を機に引っ越して条件の良い会社を探す」というパターンが実際に起きています。社宅や家賃補助の整備、入居時のサポート体制は、採用コストを下げると同時に離職リスクを抑える投資として捉えることができます。

ポイント③ ルール・文化・日本語をセットで設計する

外国人材が職場に定着するかどうかは、技術力や賃金水準だけでなく「職場の中に居場所を感じられるか」にかかっています。以下の3層をセットで設計することを推奨します。

ルール理解

就業規則・安全規則・日常のルール(時間管理・報告の仕方・ヒヤリハットの共有など)を母国語または平易な日本語で伝える機会を入社時に設けます。口頭だけでなく図解やピクトグラムの活用も有効です。「知らなかった」から生まれるトラブルを防ぐことが、初期の信頼関係構築につながります。

文化習得・相互理解

日本人スタッフ側にも外国人材の文化背景・宗教・生活習慣への理解を促す機会を設けます。一方通行の「日本文化への適応」ではなく、双方向の相互理解が職場の居心地をつくります。「この職場にいると自分が尊重されている」という感覚が、定着の根本にある動機です。

日本語学習の支援

業務上の最低限の日本語はN4レベルで入国できますが、昇進・2号試験・介護福祉士試験に向けてはさらなる日本語力が必要です。業務時間内に学習時間を確保する、教材費や試験受験費用を会社が負担する、定期的な学習進捗を確認するといった具体的な支援が、「この会社で頑張ろう」という動機につながります。

定着施策は採用前から提示してこそ競争力になる

3つのポイントに共通することが一つあります。「採用した後に整備すれば間に合う」ではなく、採用を決める前から設計しておくべき内容だということです。

2号移行の道筋・住居支援・日本語学習支援の3点を採用時に具体的に提示できる企業は、そうでない企業より候補者から選ばれやすくなります。外国人材の側には「どの会社が自分のキャリアにとって有益か」という選択眼があり、それは制度が成熟するにつれてより鮮明になっていきます。

定着施策は「コスト」ではなく「採用競争力への投資」として設計することが、今後の外国人採用戦略の中心に据えられるべき視点です。

irohana studyで「選ばれる会社」の体制をつくる

2号移行支援と日本語学習支援を企業として整備するにあたって、いろはなはirohana studyを提供しています。

外国人材向け:スマートフォンで学習できる試験対策アプリ

特定技能1号として働きながら、スキマ時間に試験対策ができる学習アプリです。母国語対応の教材で特定技能2号や介護福祉士試験の対策ができ、忙しい現場で働く外国人材が無理なく継続できる設計になっています。

企業向け:試験申込・学習状況の管理ツール

試験申込に関わる手続き管理と、外国人材の学習進捗を企業側でも把握できる仕組みを提供しています。「誰がどの段階にいるか」が可視化されることで、企業担当者が適切なタイミングでサポートに入れます。

専任講師との定期レッスンプラン

アプリ学習に加えて、日本語教師・介護福祉士資格保持者などの専任講師とのオンラインレッスンプランも用意しています。2号試験対策・介護福祉士試験対策・日本語力の底上げまで、一人ひとりの状況に合わせた支援が可能です。

採用した人材の「次のステップ」を企業として支援できる体制こそが、転職市場が成長する時代に「選ばれる会社」になるための具体的な一手です。

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