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特定技能流入ルートから読み解く、自社に必要な採用ルートの築き方

特定技能制度で外国人材を採用するうえで、見落とされがちな観点が「流入ルート」です。同じ特定技能でも、分野によって人材が来日・移行してくるルートはまったく異なります。

2026年4月の外食業の新規受入停止が示したとおり、特定技能には分野ごとに上限数が設定されており、採用ルートが一極集中している分野ほど上限到達リスクも高まります。本記事では、出入国在留管理庁の公表データをもとに、12分野それぞれの流入ルート構成を分析し、自社がどのような採用ルートを持つべきかを考えます。

出典・資料根拠

  • 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数(令和7年12月末現在)」
  • 同「特定技能在留外国人数 第7表(在留資格取得経路別)」

本記事で使用している「試験ルート」「技能実習ルート」の分類と比率は、出入国在留管理庁が公表する 第7表「在留資格取得経路別・分野別・国籍別 特定技能在留外国人数」 に基づいています。同表では特定技能1号の在留者を「①試験等による取得」「②技能実習からの移行」の2区分で集計しており、本記事ではこれを「試験ルート」「技能実習ルート」と表記しています。

外食業の停止が示した「上限ありき」の現実

外食業は2026年4月13日より新規受入を原則停止しました。上限(5万人)への到達が理由です。

改めて外食業の在留者を見ると、試験ルートが97.6%と際立って高い分野です。つまり在留者のほぼ全員が、国内もしくは国外で試験を受けて来日・移行した人材ということになります。上限到達との直接的な因果関係は一概には言えませんが、流入ルートの構成という観点から外食業の特徴を把握しておくことは、今後の採用を考えるうえで重要です。

こうした流入ルートの構成は分野によって大きく異なります。どのルートから人材が来ているかを知ることで、自社がアプローチすべき採用チャネルが見えてきます。

では今後、企業はどのようなルートで採用候補者を確保すればよいのでしょうか。その答えを探るために、分野別の流入ルートを改めて整理します。

特定技能への2つの流入ルート

特定技能1号への主な流入ルートは2つあります。

試験ルート
日本語試験・技能評価試験に合格して特定技能を取得するルートです。日本国内にいる留学生・在留外国人が受験するケースが多く、採用ターゲットは「すでに日本にいる外国人(国内在留者)」になります。国内での紹介・転職採用が主なチャネルです。一方、現地(海外)で試験を受けて来日するケースも含まれます。

技能実習ルート
技能実習2号以上を修了して特定技能に移行するルートです。実習先企業でそのまま雇用継続するケースと、修了後にほかの企業へ転職するケースがあります。採用ターゲットは「技能実習を修了した外国人」になります。

この2つのルートの比率が、 分野によって大きく異なります。

流入ルートの分野別比較

分野試験ルート技能実習ルートタイプ
航空99.0%1.0%試験型
外食業97.6%2.4%試験型(停止中)
宿泊92.0%8.0%試験型
介護85.5%14.2%試験型
ビルクリーニング63.0%37.0%混合型
農業49.0%51.0%混合型
飲食料品製造業44.1%55.9%混合型
自動車整備35.7%64.3%実習型
漁業26.2%73.8%実習型
建設2.6%97.1%実習型
造船・舶用工業0.5%99.5%実習型
工業製品製造業0.5%99.5%実習型

※ 令和7年12月末・特定技能1号のみ。比率は丸め処理の関係で合計が100%にならない場合があります。

流入ルートの違いから分かること

試験型の分野:採用競争が激しくなりやすい

介護・宿泊のように試験ルートが主体の分野は、在留者の大半が「すでに日本にいる外国人」です。国内在留者の母数には限りがあるため、採用企業間の競争が激しくなりやすい構造です。

外食業が示したように、試験を受ける人が増えれば在留者数は急増します。しかし裏を返せば、上限に到達するまでの時間軸が短いとも言えます。介護・宿泊の充足率はまだ半数以下ですが、現在のペースで在留者が増え続ければ、採用ウィンドウは思ったより短い可能性があります。

採用のポイント: 国内在留者の紹介ルートを早めに確保すること。また現地(海外)での試験合格者採用も組み合わせると採用チャネルが広がります。

実習型の分野:既存ネットワークが採用を左右する

建設・工業製品製造業・造船のように技能実習ルートがほぼ100%の分野は、在留者のほとんどが「技能実習修了者」です。これは採用マーケットが、技能実習のネットワーク(送出機関・監理団体)と深く連動していることを意味します。

技能実習から特定技能への移行は、既存の実習先でそのまま継続雇用されるか、実習修了後に転職するかの2パターンです。後者を採用するには、技能実習修了者を紹介できるルートを持っているかどうかが採用成否を左右します。

採用のポイント: 技能実習修了者の紹介・移行支援ができるパートナーを持つこと。自社で技能実習生を受け入れている場合は、修了後の特定技能移行を前提とした育成計画を立てること。

混合型の分野:ルートを組み合わせることで安定採用が可能

飲食料品製造業・農業のように試験・実習が混在する分野は、2つのルートを組み合わせることで採用チャネルを厚くできます。

飲食料品製造業は全分野最大の在留数(95,644人)ですが、充足率は69%と上限に近づいています。外食業停止後、外食の在留者が飲食料品製造業へ転職するケースも想定されており、今後は試験ルート(国内在留者・現地採用)の比重がさらに高まると見込まれます。

採用のポイント: 実習修了者のパイプラインと国内在留者紹介の両方を持つことで、採用安定性が高まります。

分野別:採用ルートをどう持つべきか

ここからは代表的な5分野について、採用ルートの具体的な持ち方を整理します。

介護分野|在留67,871人 / 上限135,000人 / 充足50%

試験ルート85.5%。採用ターゲットの主体は 国内在留の外国人です。

特に注目すべきはミャンマー人とインドネシア人。ミャンマー人の介護技能評価試験の合格率は96%、介護日本語評価試験の合格率は85%と高水準で、在留数は近年で約4倍(4,730人→19,803人)に拡大しています。インドネシア人も介護分野在留数No.1(21,139人)で、国内在留者の紹介・現地からの試験合格者採用の両軸で対応できます。

※試験合格率の出典:公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)公表値。在留数推移は出入国在留管理庁「在留外国人統計」各年公表値より。

なお、介護は特定技能2号の対象外(1号のみ)ですが、国家資格「介護福祉士」に合格することで在留資格「介護」への移行が可能です。在留資格「介護」は在留期限の上限がなく、長期就労・定着につながる主流の道筋となっています。採用した人材の介護福祉士受験を支援する体制を整えることが、長期的な定着と安定供給の両立につながります。

持つべき採用ルート

  • 国内在留ミャンマー人・インドネシア人の紹介ルート(主力)
  • 現地(ミャンマー・インドネシア)での試験合格者採用ルート(補完)

宿泊分野|在留1,998人 / 上限23,000人 / 充足9%

試験ルート92%。全分野で最も上限に余裕があり、インバウンド回復で需要も急増しています。現時点で在留者約2,000人と競合が少なく、先行して採用ルートを確保できる数少ない分野です。

国内在留の留学生(ネパール・ベトナムなど)からの移行が主流で、試験合格後に宿泊業へ就労するケースが多くなっています。

持つべき採用ルート

  • 国内在留者(留学生)への紹介ルートを今のうちに確保
  • 競合が少ない今が先行投資のタイミング

外食業|在留44,925人 / 新規受入停止中

試験ルートが97.6%でしたが、現時点で新規の試験経由採用はできません。外食業の停止は、試験ルート一本に依存する採用構造のリスクを露わにしました。

今できる採用アクションは以下に限られます。

  • 同分野内の転職採用 :外食業ですでに就労している在留者への転職採用は引き続き可能
  • 特定技能2号への育成 :外食業は2号対象。N3以上の日本語力(日常会話レベル)と熟練技能が必要。既存の在留者を長期戦力へ育てる
  • 飲食料品製造業への採用シフト :同じ「食」カテゴリで試験・実習ともに対応可能

持つべき採用ルート

  • 外食分野在留者の転職情報へのアクセスルート
  • 飲食料品製造業への移行を見据えた採用チャネルの開拓

飲食料品製造業|在留95,644人 / 上限139,000人 / 充足69%

混合型(試験44.1% / 実習55.9%)。技能実習修了者の移行と国内在留者の試験取得の両方から人材が流入しています。

充足率は69%と上限に近づきつつあり、外食業の停止後に転職者が流入することで加速する可能性もあります。実習修了者パイプラインはすでにかなり活用されており(技能実習在留数92,627人に対し特定技能95,644人)、技能実習生からの自動供給ペースを特定技能在留者の増加が上回りつつある状況です。今後は試験ルートの比重が高まると見込まれます。

持つべき採用ルート

  • 技能実習修了者の紹介・移行支援ルート(既存パイプラインの活用)
  • 国内在留者の試験合格者への紹介ルート(今後の主力になる)
  • 外食業からの転職者情報へのアクセスルート(短期的な補完)

建設分野|実習ルート97.1%(実習型の代表例)

技能実習ルートが97.1%。建設は実習型分野の代表で、 採用マーケットの100%近くが技能実習修了者 です。

建設分野は深刻な人手不足を背景に上限枠も大きく設定されており、技能実習修了者の確保が最重要テーマとなっています。技能実習生を自社で受入れている企業は、修了後の特定技能移行を前提とした育成計画を立てるのが定石です。実習生を受入れていない企業は、技能実習修了者を紹介できるルート(送出機関・監理団体ネットワークを持つ人材紹介会社など)を持つかどうかが採用力に直結します。

建設は特定技能2号の制度導入当初から対象分野であり、 特定技能1号→2号→永続就労という長期キャリアパスが業界スタンダード になっています。採用時から「2号移行を見据えた育成計画」を提示できるかが、定着と長期戦力化の鍵です。

造船・舶用工業や工業製品製造業も同様の実習型構造で、採用戦略の基本ロジックは建設に近いものとなります。

持つべき採用ルート

  • 技能実習修了者の紹介ルート(自社受入の有無に関わらず必須)
  • 特定技能2号移行を前提とした育成・教育パートナー

まとめ:採用ルートの「多様化」が安定供給の鍵

外食業の停止が示したのは、 1つの採用ルートに依存する構造のリスク です。流入ルートの構成や上限数への充足状況を把握したうえで、複数の採用チャネルを持つことが中長期的な安定供給につながります。

今後の外国人採用では、以下の観点から採用ルートを多様化しておくことが重要です。

観点内容
国内在留者ルートを持つ試験型分野(介護・宿泊)では必須。紹介パートナーとの関係が競争優位につながる
実習修了者ルートを持つ実習型分野(建設・製造)では主力。技能実習のネットワークと連動した採用が不可欠
現地採用ルートを持つ国内在留者が少ない分野や地方採用では、現地から直接採用するルートが安定供給に貢献
複数分野・複数国籍に対応できる1分野・1国籍への依存を避けることで、制度変更や停止リスクを分散できる

採用して終わりにしない:在留資格の長期化戦略

採用ルートの確保と同じくらい重要なのが、採用した人材の 定着と在留資格の長期化 です。特定技能1号は通算5年の在留期限があり、その先のキャリアパスを採用時から見据えておくことが、採用コストと上限数の影響を同時に抑えるうえで欠かせません。

在留資格を長期化する2つのルート

特定技能1号からの主な「次のステージ」は、分野により2つに分かれます。

ルート①:特定技能2号への移行(介護以外の11分野) 技能試験と日本語試験に合格することで取得できる在留資格です。 在留期限の更新に上限がなく、家族帯同も可能 。建設・造船・工業製品製造業など実習型分野では「技能実習→特定技能1号→特定技能2号」の長期キャリアパスが王道になりつつあります。試験型・混合型分野でも、外食業のように上限到達リスクのある分野では2号移行が長期戦力化の主軸となります。

ルート②:在留資格「介護」への移行(介護分野のみ) 介護分野は特定技能2号の対象外のため、長期化ルートは国家資格「介護福祉士」合格による在留資格「介護」への移行となります。 在留期限の上限がなく、家族帯同も可能 で、介護分野での長期定着の主流ルートです。

「移行」が上限数対策にもなる理由

どちらのルートにも共通する重要なポイントは、 移行後の人材は特定技能の上限数のカウント対象から外れる ことです。

外食業の停止が示したとおり、特定技能1号は分野ごとに上限数が設けられており、在留者が増加すると新規採用が困難になります。しかし2号や在留資格「介護」に移行した人材は上限枠から外れるため、 採用した人材を早期に上位資格へ移行させることは、自社の長期戦力化と同時に、業界全体の上限数の枠を次の採用のために空けることにもなります。

採用・教育・定着・移行をひとつながりのプロセスとして設計することが、持続可能な採用体制の構築につながります。

共通する成功要因:試験対策の支援体制

両ルートとも、 国家試験または技能評価試験への合格 が必須です。外国人材にとって日本語での試験対策は大きなハードルであり、 受入企業側が試験対策の環境・時間・教材を整えているかどうかが、定着率と合格率を大きく左右します。

具体的に企業側が用意すべき支援体制は、以下の5つの観点で整理できます。

① 学習時間の業務内確保 業務時間内に週数時間の試験対策枠を設けるのが効果的です。実務後の独学に任せると、シフト勤務や夜勤の負担で継続が難しくなります。シフト調整・学習日設定など、現場レベルでの運用ルール化が必要です。

② 教材費・受験料の企業負担 教材費・通信講座代・模試代・受験料を企業負担とすることで、本人の学習意欲とロイヤルティを高めることができます。「会社が投資してくれている」という意識は、定着率にも直結します。

③ メンター制度・先輩外国人による指導 同じ受験経験のある先輩外国人や日本人有資格者をメンターに据えると、孤立感の解消と実践的なアドバイスの両方が得られます。母国語で相談できる体制があるとさらに効果的です。

④ 模擬試験と進捗管理の定期実施 半年から1年前から模擬試験を定期的に実施し、弱点把握と学習計画の修正を繰り返すサイクルが効果的です。学習アプリなどを活用すれば、本人の学習状況を企業側が可視化することもできます。

⑤ 合格後の待遇インセンティブ 合格時の祝い金、資格手当、昇給制度などを明示することで、受験へのモチベーション維持につながります。「合格すれば長く働ける・待遇も上がる」という見通しを採用時から示すことが重要です。

これらを「個人の頑張り」に委ねず、企業の制度として体系化することが、外国人材戦略の差別化要素になります。

いろはなができること——採用から定着・移行支援まで

いろはなでは、特定技能をはじめとする外国人採用の各フェーズを、 全分野対応で ワンストップ支援しています。

人材紹介(いろはなキャリア) ミャンマー・インドネシアをはじめアジア各国に対応した紹介ネットワーク。国内在留者紹介と現地採用の両軸、特定技能・技能実習修了者の双方に対応し、各分野に適した人材をご提案します。

在留手続き支援(irohana visa) 特定技能の在留申請・更新・届出から、特定技能2号への移行申請、在留資格「介護」への移行申請まで、行政書士と連携したサポート体制を整えています。

試験対策教育(irohana study) 外国人材がスマートフォンで学習できる試験対策アプリと、専任講師による定期レッスンを提供。特定技能2号の試験対策および介護福祉士の国家試験対策に対応しており、採用した人材の「次のステップ」を企業としてサポートできる体制が整えられます。

採用から定着・在留資格の長期化まで、いろはなに一括してご相談ください。