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特定技能採用ルート構築と「特定技能・新興国」について

はじめに

特定技能制度の在留外国人数は2025年12月末時点で390,296人に達し、市場は急拡大を続けています。一方で、国籍構成は大きく変化しつつあります。長らく圧倒的首位を維持してきたベトナムの成長率は鈍化し、インドネシア・ミャンマー・ネパールといった主要国が高い成長率を示しているほか、バングラデシュ・スリランカという「新興国」も急速に存在感を高めています。

本記事では、国籍別の在留数と成長率を整理したうえで、 採用ボリュームの主役 となりつつある主要急成長国と、 次の採用候補国 として注目すべき新興国の特徴を分析します。さらに技能実習在留数との掛け合わせで、分野別の採用マーケットも整理します。

出典・資料根拠
・出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数(令和6年12月末現在)」
・出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数(令和7年12月末現在)」
・厚生労働省「外国人技能実習機構 業務統計(令和6年末)」

国籍別在留数と成長率——「ベトナム一強」の終わり

2025年12月末時点の特定技能在留者(1号+2号)を国籍別に見ると、ベトナムが圧倒的な首位を維持していますが、成長率では後続の国々が大きく上回っています。

順位国籍2024年12月末2025年12月末前年比
1ベトナム132,920人164,352人+23.6%
2インドネシア53,496人86,955人+62.5%
3ミャンマー27,337人44,523人+62.9%
4フィリピン28,180人35,862人+27.3%
5中国17,645人22,105人+25.3%
6ネパール7,003人12,387人+76.9%
7カンボジア5,999人8,500人+41.7%
8タイ5,563人6,817人+22.5%
9スリランカ2,190人4,003人+82.8%
10バングラデシュ439人839人+91.1%

ベトナムの成長率は +23.6% と全体平均(+50%)を下回り、相対的にシェアを落としつつあります。背景には、ベトナム側の若年労働人口の減少、送出料金の高騰、競合国(韓国・台湾・ドイツ等)との人材獲得競争の激化があります。

一方、絶対数でインパクトが大きいのはインドネシア(+33,459人)・ミャンマー(+17,186人)・ネパール(+5,384人)の3カ国。成長率トップ3はバングラデシュ・スリランカ・ネパールですが、絶対数が小さいバングラデシュ・スリランカは「採用候補国としての将来性」、ネパールは「すでに採用ボリュームが立ち上がった主要国」として、それぞれ位置づけが異なります。

主要国の急成長——採用ボリュームの主役

採用担当者にとって、まず押さえるべきは「実際に多く採用できる国」です。絶対数の伸びが大きいインドネシア・ミャンマー・ネパールの3カ国を整理します。

インドネシア|2024年53,496人 → 2025年86,955人(+62.5%)

絶対数で最大の伸び(+33,459人)を記録した最重要国です。介護分野では国籍別在留数No.1(介護分野内21,139人)で、飲食料品製造業・農業など幅広い分野でも主力国となっています。

主な特徴

  • 国民の約87%がイスラム教徒。礼拝時間・食事(ハラール)への配慮が職場環境整備で必要
  • 人口約2.8億人(世界4位)と豊富な労働力プール
  • 日本語学習者数も増加傾向。N4レベル合格者の現地供給が拡大
  • 送出機関のネットワークが整備されており、現地採用がしやすい

採用のポイント

国内在留者(留学生・技能実習修了者)と現地採用の両軸が成立する貴重な国。今後の介護分野ではミャンマーと並ぶ主力国となる見込みです。

ミャンマー|2024年27,337人 → 2025年44,523人(+62.9%)

介護分野で急成長中の国です。介護技能評価試験の合格率96%、介護日本語評価試験の合格率85%という高水準が、人材供給を支えています。

主な特徴

  • 国民の約88%が仏教徒。文化的に日本との親和性が高いと言われる
  • 政情不安により若年層の海外就労志向が強く、日本就労への動機が高い
  • 日本語教育機関が拡充中。介護分野での試験合格者輩出が活発

採用のポイント

介護分野では、ミャンマーは現地採用ルートの整備が最も進んでいる国の1つ。一方で政情の不安定さから、現地での試験実施や出国手続きにイレギュラーが発生する可能性もあり、複数の送出機関との関係構築が安定供給につながります。

ネパール|2024年7,003人 → 2025年12,387人(+76.9%)

成長率トップ3に入る急成長国でありながら、すでに在留数1万人を超え、採用ボリュームとしても無視できない規模に達しています。

主な特徴

  • 日本国内の留学生数で長年上位。留学生からの特定技能移行ルートが確立
  • ヒンドゥー教徒が約81%。牛肉を避けるなどの食文化への配慮が必要
  • 英語力が比較的高く、英語と日本語のバイリンガル対応がしやすい
  • 宿泊・外食業など接客業での適性が評価されている

採用のポイント

ネパールは国内在留の留学生からの移行が主力ルート。現地採用よりも、国内の日本語学校・専門学校との連携や、留学生向け紹介サービスを活用するチャネルが効率的です。

注目の新興国——バングラデシュとスリランカ

絶対数はまだ小さいものの、前年比80%超〜90%超の急成長を示しているのがバングラデシュとスリランカです。今後5年で主要国入りする可能性が高い、 次の採用候補国 として整理します。

バングラデシュ|2024年439人 → 2025年839人(+91.1%)

成長率全国籍中No.1。絶対数はまだ全国籍中ボトムですが、特定技能制度の認知が広がるにつれ今後の急増が見込まれます。日本政府は2023年に二国間協力覚書(MOC)を締結しており、制度面でも採用環境が整備されつつあります。

国・人材としての背景

  • 人口約1.6億人。20〜30代の若い労働人口が5,000万人を超える人口大国
  • 国内の初任給は日本円換算で月額15,000円前後と言われ、日本就労への経済的動機が強い
  • イスラム教徒が人口の約90%。礼拝時間・ハラール対応が必要
  • 旧英国植民地の歴史から英語が普及。高学歴層は英語でのコミュニケーションが可能
  • 日本語学習者はまだ少数。採用時には日本語力の個別確認が必要

主な流入ルート

試験ルートが約77%。現時点では現地採用が中心で、現地での試験合格者を直接採用するチャネルが主軸となります。

採用時の留意点

スキルアップ志向が強く、昇進・昇給のキャリアパスが見えない環境では転職を選ぶ傾向があるという声があります。採用時にキャリアパスを明確に提示することが、長期定着につながると考えられます。

スリランカ|2024年2,190人 → 2025年4,003人(+82.8%)

成長率全国籍中2位。日本との歴史的友好関係(1951年のサンフランシスコ講和会議でジャヤワルダナ蔵相が対日賠償請求権の放棄を表明)もあり、日本就労への心理的ハードルが低い国の1つです。日本政府との二国間協力覚書(MOC)は2024年に締結されています。

国・人材としての背景

  • 人口約2,200万人の島国
  • 2022年の経済危機(外貨不足・物価高騰・IMF支援要請)以降、政府が海外就労を積極推進
  • 旧英国植民地の影響で英語教育が充実。ビジネスレベルの英語話者が多い
  • 主要な宗教は仏教(約70%、上座部仏教)、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教と多様
  • 日本語学習者数は増加傾向だが、英語コミュニケーションが容易なことと職場適応のスムーズさは別の問題。個別確認が重要

主な流入ルート

試験ルートが約82%。現地での試験合格者が来日するケースが中心で、国内在留者はまだ少ない段階です。

特定技能と技能実習のパイプライン——分野別の採用マーケット

特定技能の在留数だけでなく、技能実習の在留数を重ね合わせることで、 今後どの分野に採用候補者が流れてくるか が見えてきます。

分野技能実習在留数特定技能在留数状況の読み方
建設106,568人49,323人最大のパイプライン。約5万人が未移行
飲食料品製造業92,627人93,393人ほぼ同規模。移行が進み残余は限定的
工業製品製造業60,781人56,736人ほぼ同規模。引き続き移行が続く
農業31,635人37,952人試験ルートも伸びている
繊維・衣服26,086人工業製品に含む移行可能だが業務区分の対応関係に注意
介護20,065人67,871人特定技能が3倍超。試験ルートが主力
ビルクリーニング8,227人8,395人ほぼ同規模
自動車整備5,818人4,560人移行余地あり
漁業3,352人4,590人試験ルートも活用
宿泊2,403人1,968人絶対数は少ない

※ 技能実習在留数は2024年末。特定技能在留数は2025年12月末(特定技能1号のみ)。主要10分野を抜粋。 ※ 繊維・衣服分野の技能実習修了者は、2024年の業務区分追加により工業製品製造業(縫製・紡織製品製造区分)への移行が可能になりましたが、業務区分の対応関係や試験要件があるため、すべての修了者が直接移行できるわけではありません。

パイプラインから読み解く採用戦略

建設分野 :技能実習在留数10万人超に対し特定技能は約5万人と、最大の「未移行プール」を抱えています。技能実習生を受入れている企業は移行を前提とした育成計画が定石、受入れていない企業は監理団体ネットワークを持つ人材紹介ルートの確保が急務です。

飲食料品製造業・工業製品製造業 :技能実習と特定技能がほぼ同規模で推移しており、技能実習修了者の移行ペースが限界に近づいています。今後は試験ルート(国内在留者・現地採用)の比重が増す見込みで、 新興国(バングラデシュ・スリランカ)含む多国籍採用への切替が課題 となります。

介護分野 :特定技能が技能実習の3倍超と、すでに試験ルート主体の構造が完成しています。ミャンマー・インドネシアからの試験合格者採用が引き続き主軸となります。

採用担当者が今動くべきステップ

国籍構成の多様化を踏まえ、採用担当者が実際に動くべきステップを整理します。

  • 自社採用国籍の偏りを棚卸しする ——ベトナム偏重になっていないか、複数国籍に分散できているかを確認
  • 新興国採用に向けた送出機関リスト整備 ——バングラデシュ(2023年MOC締結)・スリランカ(2024年MOC締結)の送出機関情報を入手
  • 試験の現地実施状況を確認 ——採用候補国で対象分野の特定技能試験が実施されているか、年間試験回数はどの程度か
  • 文化・宗教配慮の事前整備 ——ハラル対応(インドネシア・バングラデシュ)、礼拝時間の確保、食文化(ネパール:牛肉回避)など、複数国籍受入を想定した職場環境の整備
  • 日本語教育レベルの確認と研修体制構築 ——新興国は日本語学習者がまだ少数。採用前後の研修体制を整備
  • キャリアパスの明示 ——スキルアップ志向の強い国籍(バングラデシュ等)に対し、昇進・昇給・在留資格長期化(2号移行・在留資格「介護」移行)の道筋を採用時から提示

まとめ:国籍の多様化は採用安定性と組織強化につながる

特定技能の採用市場において、「ベトナム一強」の時代から多国籍化が加速しています。ベトナムの成長率が鈍化する中、インドネシア・ミャンマー・ネパールという主要国が高成長を続け、バングラデシュ・スリランカという新興国も急速に在留数を積み上げています。

1カ国・1分野への依存は、制度変更や上限到達によって採用が突然停止するリスクを高めます。複数の国籍・複数のルートに対応できる採用体制を整えることが、中長期的な人材確保の安定につながります。

一方で、採用する人材の国籍が多様化することは、単なる人材確保の手段にとどまりません。異なる文化的背景・言語・宗教を持つ人材が増えることは、企業としての雇用管理体制の見直しや強化を促すきっかけになります。評価制度・労務管理・コミュニケーション設計を改めて整理し、外国人雇用の経験値を積み重ねていくプロセスは、日本人を含む全従業員にとってより公正で明確な人事制度の構築にもつながっていきます。

外国人材の採用は、人事制度全体を強くするための投資でもある ——そう捉えて取り組む企業が、長期的に選ばれる職場になっていくのではないでしょうか。

いろはなができること——多国籍対応の採用支援を全分野で

いろはなでは、特定技能をはじめとする外国人採用の各フェーズを、全分野対応でワンストップ支援しています。

人材紹介(irohana career)

ベトナム・インドネシア・ミャンマー・ネパール・スリランカ・バングラデシュをはじめアジア10カ国以上の現地ネットワークを保有。現地採用・国内在留者紹介・技能実習修了者の移行支援まで、採用ルートの設計から対応します。

在留手続き支援(irohana visa)

特定技能の在留申請・更新・届出から、特定技能2号への移行申請、在留資格「介護」への移行申請まで、行政書士と連携したサポート体制を整えています。

試験対策教育(irohana study)

外国人材がスマートフォンで学習できる試験対策アプリと、専任講師による定期レッスンを提供。特定技能2号の試験対策および介護福祉士の国家試験対策に対応しており、採用した人材の「次のステップ」を企業としてサポートできる体制が整えられます。

新興国採用に向けた送出機関の選定から、文化・宗教配慮を含む受入体制の構築、長期戦力化に向けた在留資格移行支援まで、いろはなにご相談ください。

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